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「私は、こなたが好き」 こなたが好きだと自覚したのは……いつからだろう。 恋は突然やって来る、恋は気付くと急激に想いが強くなっていく。 ラノベではよくある事だけどまさか自分が体験するとは思ってもいなかった。 「こなたが好き」 この想いが頭から離れず、授業中も放課後も入浴も食事もずーっと……こなたの事を考えていた。でも、この恋は間違った恋だ。 何故なら私とこなたは女性、この恋は普通の人生ではイレギュラーな事。 もしくはあってはいけない、と言えばいいのかな。とにかく間違った恋を私はした。 それでも後悔なんて一度もしなかった。 寧ろ清々しい気分になった、自分の気持ちに気付けるのがこんなにも気持ちいい事なんて……知らなかった。 私はこなたが好き、この想いは一点の曇りもない。 例え両親が反対しても、周りから「レズビアン」と言われようと、私は揺るがない。 この気持ちに気付いてしまったから――。 ――貴女が壊れるまで―― 「かがみん?」 私が物思いに耽っているとこなたが不安げに私の顔を覗き込んできた。 「ん?何?こなた」 「……何か思いつめた顔をしていたから……不安になって」 私はそんな表情をしてたのか……こなたを不安にさせただけ。 「ゴメンゴメン、ちょっとね……思い出してたのよ」 「何を?」 「こなたが好きだと気付いた時の事」 そう言うとこなが目を丸くする、何を驚いているのだろう。 「いつからか忘れちゃったわ、気付いたらこなたに恋してた」 初めて会った時は可愛らしい女の子だと思っていた。 「好きと気付いちゃうとね、本当に苦しくなるのよ。締め付けられる様にね」 しばらく一緒に過ごしていく内に段々とこなたの事が分かってきた。 オタクな事、実は両手利きな事、もずくが食べれない事、運動神経が抜群に良いこと……お母さんが亡くなっている事。 「その辛さに私は耐えられなかった。夜中ベッドで苦しくて苦しくて、泣いた事もあったわ」 そして、こなたが時々寂しげな表情をする事。 特に親子連れを見ると毎回している気がする。 「普通だったらここで告白か諦めるかになるでしょ?私は、どっちも選べなかった」 それでもこなたは毎日、おちゃらけて見せていた。 本当はお母さんが居なくて寂しいのに、そんな素振りは絶対に見せない。 「私とこなたは女でしょ?告白は出来ないと思ったのよ。世間では間違った恋と言われてるからね」 でも、私は見てしまった。 放課後、一人で泣いているこなたを。 必死で泣き声を殺して、震えているこなたを。 「それに告白したらこなたに気味悪がれちゃうかもしれない……怖かったのよ、こなたに嫌われるのが」 何でこなたが一人で居たのか分からない。 何で教室に居たのか分からない。 気付くと私はこなたを抱きしめていた。 「でもね、この想いを捨てようとは思わなかった。この恋を諦めようとは思わなかった」 抱き締めたこなたはやっぱり小さくて、今にも消えそうで、物凄く震えていて、普段の様子からは想像出来ないくらい……か弱い女の子だった。 「だからね、こなた。私は選んだんだ、この想いを伝えようって。嫌われるのは怖かったけどこのまま溜め込むのも無理だと思ったから……」 こなたは信じられないと言いたげな表情をして、一瞬いつも通りの表情をして、でもすぐに涙によって崩されて。 ……私にしがみついて大泣きした。 「……それで……まあ今に至るわけね」 泣いて泣いて、私にしがみついて泣いて、今までの寂しさを押し出す様に、私にぶつける様に、こなたは泣いた。 「かがみは……後悔……してない?」 こなたの言葉に私は驚愕する。 「後悔なんてする訳ないでしょ……後悔するくらいだったら私は告白なんてしてないわよ」 隣に座っているこなたを抱き寄せ、頭を撫でる。 夕焼けが私とこなたを朱く染める。 「でも……この恋は間違ってるんでしょ……?他の人に気味悪がれちゃうくらい」 「……まあ、そうなんだけどね」 「私、怖い……」 初めて聞いた、こなたの弱音。 震える小さなこなたの体、震えているのは寒さだけではないはずだ。 「かがみが気味悪がれて……壊れちゃうのが……怖い」 ……え? こなたは……何を? 「怖がる事は無いわよ……と言うか壊れるって?」 「前に見た漫画であったんだよ……同姓の子に告白した翌日、周りから罵られて……心が壊れちゃうというのが……」 心が壊れる……。 「もしかがみが壊れちゃったら……私……私……!!」 「こなた」 今にでも泣きそうなこなたを私は強く抱きしめる。 その不安な心情を壊す様に。 「好きよ、こなた」 「……え……」 「こなた、大好き」 「……うぅ……」 「私はこなたが好き」 「……うん」 「間違っていても、私は好き」 「……私も……だよ……」 どうやら少しは安心してくれたみたいね。 でも、まだどこか不安げね。 「こなた、私はね、今決めた」 「決めたって……?」 「こなたが壊れるまで愛すわ」 「……え?」 一見物騒な言葉だけどちゃんと意味がある。 「その不安なんか私が壊してみせるわ」 「かがみ……」 「忘れたの?私は凶暴だという事を。そう言ったのは……こなただったよね?」 「で、でもあれは……」 「いいのよ、凶暴な方が壊せるでしょ。その不安は私に譲りなさい」 「……」 「そしてその不安を壊したら……次は」 「かがみ」 「ん?」 「かがみが壊れるまで愛す愛してみせる……だからさ、今の私の事……壊して?」 「望む所よ、こなた」 日はすっかり沈んで辺りは暗くなり、電灯に光が灯される。 その中で抱き合う私とこなた。 「大好きよこなた」 「かがみ、大好き」 ―貴女が壊れるまで愛す、愛してみせる― 不安を壊して、今の貴女を壊して、貴女が死ぬまで愛し続ける。 こなたとのキスはちょっぴりしょっぱい、けど甘い――味だった。 -END- コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-10-14 09 34 02) 感動です!お二人のこと応援します! -- かがみんラブ (2012-09-18 22 09 41) この2人なら大丈夫でしょう。そう信じてGJです。 -- kk (2010-04-09 21 57 10) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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小さな子が泣いている。 その子はとても小さくて、とてもか弱そうで……とても……。 ……そう、こなた……こなたに似てるんだ……。 ……あれ……私……何を……? ……っ!!そうか……私は……こなたを庇って……。 ……こなたは? ――みぃ……。 ……小さな子が何かを言っている。 ――がみぃ……。 「――かがみぃ!!」 ――奇跡から幸福へ―― 「……っ!!」 ……私は……柊かがみ……。 ……ここは……病院? ……確か私は……こなたを庇って……。 ……こなたは!? こなたは無事!? 「……ん……」 気が付くと何やら黒い塊が私の上にのしかかっていて……ってつかさか。 「……おーい、つかさー。起きろー」 つかさは寝ていると予測、私のカンがそう告げている。 さて、どうやって起こそう。 1、揺さ振る 2、叩く 3、落とす ……駄目だ、絶対に起きない。 ……それにしても……こなたは……? 「……んん……お姉……ちゃん……?」 どうやらつかさが目を覚ました様だ。 「……えーと……おはよう……かな……?」 その時つかさが大泣きしながら私に抱き着いて来た。 本当に甘えん坊なんだから……全く……。 「お姉ちゃん……お姉ちゃん……よかった……」 「そう簡単に死なないわよ……ほら、泣き止んで」 それにしても以外と身体が動くわね、何でだ? ……別にいっか。 「心配したんだよ……ずっと目を覚まさないで……」 「ずっと……って……何日ぐらい?」 「3日……かな」 げ……そんなに寝てたのか……。 これじゃ授業に遅れる……今度のテストやばいかも……。 ……そんな事よりもこなただ、こなたは何処に? 「つかさ、こなたは何処?」 「え?こなちゃん?……ちょっと待っててね」 そう言うと病室から出ていってしまうつかさ。 ……3日……こなた……泣いていたのかな……。 もしかしたら自分の事を責め続けていたのかもしれない。 ……こなたは普段ああいう奴でも……。 ……甘えん坊……か。 こなた……会いたい……。 身体は動く、吐き気とかそういう症状もない。 ……行っちゃおうかな……。 でもこなたが何処に居るか知らない。 ……つかさが帰ってくるのを待つしかないか……。 ―――――――――― 「お待たせ~お姉ちゃん」 つかさが戻って来た。 ……こなたは来たのかな? 「つかさ、こなたはどうしたの?」 「それがね……会えないって……」 ……会えない? 「こなちゃん泣いてたよ、お姉ちゃんが怪我したのは自分のせいって責め続けてた」 ……やっぱり……。 「仕方ないわね……こなたは何処に居るの?」 「え……?ど、どうするつもりなの?」 「決まってるでしょ」 こなたが来ないなら……。 「案内してつかさ、私がこなたに会いに行く」 ―――――――――― かがみ……よかった……目を……覚ましたんだ……。 3日……長かったなぁ……。 つかさが言ってた、かがみが私に会いたいって。 ……会えないよ……私のせいだもん……。 私がかがみを傷付けたみたいなんだから……。 こんな罪深い私が……かがみと会うなんて……。 でもかがみと会いたい、会って抱き着いて思い切り泣いて、かがみに……甘えたい……。 ……どうしたらいいのかな……私……。 「どうして自分の事を責め続けてるの?」 もう一つの私の心が問いかけてくる。 「……私の……せいだから……」 「どうして自分のせいだと思うの?」 「……私が……かがみをアキバに……連れていったから……」 「……じゃあ……このままでいいの?」 「……いいわけないよ!!!私だってかがみに会いたい!!今すぐに会いたい!!かがみに会って甘えたい!!だけど……だけど……ひっく……」 「……ホント、アンタって意地っ張りね」 私はその声を聞き顔を上げる。 そこに居たのは……。 「3日ぶりねこなた、元気にしてた?」 「か、かがみ……」 私の大好きな人……かがみだった。 「全く!!何が自分のせいよ?アンタに非なんて全然無いわよ!!私が勝手にこなたを庇っただけ!!」 「……う……っ……」 「いい?こういう時は我慢しないで来るの。非があったとしても会いに来るの……私だって……会いたかったんだから」 「……ひっく……かがみぃ……」 「……おいで、こなた」 かがみのその一言に私は頷き抱き着き……泣いた。 「よしよし……辛かったよね……3日間もほったらかしにして……ごめんね」 「かがみぃ……かがみぃ……!!」 もう何も考えられない、唯一考えられるのはかがみの事だけ。 「好きなだけ泣いていいからね……私が全部……受け止めてあげるから……」 「えぐ……ひっく……」 ……そんな事……言われたら……泣き止むことなんて……出来ないよ……!! ―――――――――― 小さな子供の様に泣くこなたを抱きしめ、頭を撫でる私。 ……なんか母親になった様な気分……。 この小さな身体でどれだけ自分の事を責め続けたんだろう、どれだけ自分で自分を傷付けたのだろう。 ……今のこなたは傷だらけ、私が治すしかない。 ……こなたは……今までこうやって泣いた事……あったのかな……。 もしかしたら初めてなのかもしれない……。 「うぐ……ひっく……えぐ……」 ……不覚にも泣きじゃくるこなたが可愛いと思ってしまった。 ……不謹慎だ私……。 でも……可愛いって所は譲れない。 だって私の……好きな人なんだから。 ―――――――――― 「……落ち着いた?」 「…………うん」 あれから1時間ぐらい経っただろうか、私達は抱き合いながらベッドの上で横になっている。 一人用?でもそんなの関係ねぇ。 「……温かい」 こなたが私の胸に頭を押し付けてくる。 ……可愛い……何て言うか……いつもよりしおらしいこなた……。 どうしようもなく愛おしくなり私はこなたの頭をほお擦りする。 「こなた……これからずっと一緒だからね……」 「……お願いだよ……」 分かってるわよ、そんなに怯えなくて大丈夫。 「だって私は……こなたの嫁でしょ?」 「……嬉しい……」 ……あ、あれ?なんか普通に返された……。 ……今のこなたはオタクなこなたじゃなくて……弱気なこなた? ……今理性が無くなりそうになった……。 でも……こなたの新しい一面が見れてよかったかも。 だって好きな人の事を知っておきたいしね♪ 「……かがみぃ……」 甘えた様な声で呼んでくるこなた、私の脳内にその声を保存した。 「……居る……よね?」 そう言って私の身体に顔を埋めるこなた。 その様子はまるで私が本当にここに居るかどうか確かめてる様で……。 「……当たり前でしょ」 私はここに居るというアピールを兼ねて強く抱きしめる。 ……本当に小さいな……。 だけど……なんか守ってあげたくなる……放っておけない……。 「……良かった……」 「……こなた?」 「……スー……」 ……寝た……のかな。 ……でも……その寝顔はどこか怯えている様な……。 ……全く、夢の中でも怯えなくていいっての。 ……でも……その不安を……失くしてあげたい……。 私は眠っているこなたに……そっと……キスをした。 ……これで少しは……安心出来るかな……。 ……私も寝よう……お休み、私の大好きなこなた。 END- コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-06-05 07 46 13) 鬱end苦手だからホッとした -- 名無しさん (2010-04-02 18 55 16) どんな鬱展開になろうとも 結局はハッピーエンドに、なるのか 少し残念だな -- 名無しさん (2010-03-22 20 20 49) happy・end よっしゃあぁぁぁぁ -- ラグ (2009-02-06 12 53 20) 1話(幸福から絶望へ)を拝見した時はどうなる事かと思いましたが、良かった良かった。 こういう鬱展開でも最後に逆転ハッピーエンド的な作品は大好きです。 -- kk (2009-02-04 22 45 06) 和んだ -- アイスラッガー (2009-02-04 20 21 33) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
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夏休み。 いつも通り、こなたはわたしの家に来ている。 ただし今日はこなたとわたしの二人だけ。 まあ二人きりだからと言って、別に特別なことをしている訳じゃないんだけど。 「かがみ、ちょっとこの英訳みて」 今日はこなたは珍しくやる気を出して勉強している。 どうやら夏休みも終盤にさしかかり、ようやくエンジンがかかってきたらしい。 こなたが今差し出したライティングのノートにしても、昨日のうちに家で解いてきた問題のようだ。 「はいはい。 うーん…これは前段との関わりから来ているから、前のページのこの節の…」 そんなことをいいながらページをめくると、ノートの片隅にこなた独特の読みづらい文字で小さくメモ書きがあった。 きっと夜中にでも問題を解いているうちに、なんとなく書いたものなのだろう。 「今月の目標、身長+5㎝…ねぇ」 ぽつりとそこに書かれた言葉を口にする。 「あっ!消し忘れてた!?」 その途端、こなたが驚いた声を出し、わたしの手からノートを奪い取ろうとする。 思わずひょいと避けると、こなたは顔を真っ赤にして膝を詰めてきた。 「ちょっ!ダメだってば!!」 どうやら相当恥ずかしいらしく、耳までゆでだこのようになっている。 「何真っ赤になってるのよ」 こなたの手をかわして、わたしはノートを高く掲げた。 「真っ赤になんかなってないもん!」 そういって更に上体を伸ばしてノートを奪おうとするこなたに対抗するため、わたしは膝を立てた。 これでこなたが立ち上がりでもしない限り、17㎝の身長の差は埋められない。 「むー!!」 そんなことは百も承知だろうに、こなたは必死に手を伸ばす。 あまりいじめるのも可愛そうなのでノートを返すと、こなたは後生大事にそれを抱え込みそっぽを向いた。 それでも耳はまだたこさんのまま。 なんだかちょっと…いやものすごく可愛い。 「別に恥ずかしがらなくてもいいじゃない。 『目標を立てる』、実に結構なことだと思うわ。 ずぼらなあんたには必要なことよ」 せっかくのわたしのフォローに、振り返ったこなたは不機嫌な顔で応えた。 「かがみ、顔が笑ってる」 おっと、思わずにやけてしまっていたようだ。 「それにしても『身長+5㎝』なんて可愛い目標ね。 どうせなら平均身長くらい目指してみればいいじゃない」 「……かがみだっていきなり『体重-5kg』なんて非現実的な目標なんて立てないでしょ? まずは達成は難しくても、なんとか実現が出来そうな『体重-1kg』を目標にするじゃん」 くっ… じと目のこなたの反撃に心の中で苦痛の声を漏らす。 わたしの胸に突き刺さった言葉は、胸の奥に存在する怒りのスイッチを押し、『いかに-1kgの壁が厚いか』をこんこんと説きたくなる。 普段ならばこの挑発でこなたのペースに引き込まれるところだ。 しかし、今はこんな挑発ではわたしの優位は崩れない。 なぜなら… (ふふっ、まだ耳がピンク色じゃない) おそらくさっきの反撃も照れ隠しなのだろう。 「ところでどうして『身長を5cm』なの? あんたはもっと『別のところ』も必要なんじゃない?」 わたしは余裕の表情でこなたにそう尋ねた。 「…それ、かがみじゃなかったら『ちょっと頭冷やそうか』レベルの発言だよ。 まぁ、5cmあればあとはヒールかブーツでごまかせるかなって思ってさ」 口を尖らせてよく分からない台詞(どうせ何かのアニメネタなのだろう)を言うこなたに、わたしは首を傾げた。 「『ごまかす』って平均身長までってこと? たしかわたしの身長が平均だった気がするけど、5cmじゃ上げ底しても全然足りないじゃない。 いったい何がしたいのよ?」 わたしの問いに、こなたは下を向き沈黙する。 どうしたの? そうわたしが言う前に、こなたは正座のまま、ずずいっと膝を寄せてきた。 あの…こなたさん?随分と近づきますね。 正座をしているわたしの膝とこなたの膝の間には、指が三本入るか入らないかの隙間しかない。 UFO学なら第一種接近遭遇から第二種を飛ばして、第三種にいきなり飛びそうな勢いだ。 でもいきなりのこなたとの接近で、混乱の極みに達しているという意味では、第二種接近遭遇であるとも考えられる。 わたしの心臓のアラームはこの異常事態に激しく高鳴り、外にまで聞こえそうなほどだ。 少なくともそんな訳の分からないことを考えるくらいわたしは慌てていた。 「ちょ、ちょっと、こなた?」 わたしの問い掛けを無視して、こなたはクスリと笑う。 いつの間にかこなたの耳が普段の色に戻っていることにわたしは気づいた。 こなたの両手がわたしの肩にかけられ、その手に力が入る。 こなたがぐいっと背伸びをした。 きっとこなたは腰を浮かせているのだろう。 もしもこなたの身長が5cm伸びたする。 更にヒールやブーツを履いたとしよう。 そんな時にこなたが至近距離で背伸びをしたらこんな状態になるに違いない。 だって、そうでもしないとわたしとこなたとの17㎝の身長差を埋めることは―― つまり、こなたの方からわたしに―― 「ねえ、かがみ。 私がしたいこと教えてあげる」 こなたのエメラルドの瞳が悪戯っぽく輝きながら迫ってくる。 そして――― 「あじゅじゅじゅしたー」 わたしから離れたこなたは、「ご馳走さま」と言わんがばかりに手を合わせた。 本来ならば、そのロマンのかけらもない仕草にツッコミをいれるべきなのだが、今のわたしにそんな余裕はなかった。 こなたが離れてくれたお陰で、わたしはようやくまともに呼吸が出来るようになったからだ。 (あ、危なかったわ…) あともう少しあのままでいたら、わたしの心臓は口から飛び出て、こなたに飲み込まれてしまっていただろう。 そんなことになったら第三種どころか第四種接近遭遇だ。 うぅ…どうやらまだ混乱は続いているらしい。 「ごめん、ちょっとやりすぎたかな?」 肩で息をするわたしに、こなたが笑いながら尋ねる。 さきほどの妖艶とも思える表情ではなく、いつもの無邪気な笑顔だ。 それでもわたしの身体の熱は、そう簡単にいつもの温度には戻りそうにない。 「かがみ、耳までたこさんみたい」 立ち膝の体勢からわたしの首に腕を回し、勝ち誇ったようにこなたが耳元で囁く。 「ひょっとして、さっきので私の顔の赤さが移っちゃった?」 「う、うるさいわね!」 そんな強がりを言ったところで、この顔の熱さからしてさっきのこなたよりもわたしの方が遥かに真っ赤になっているようだ。 悔しいが炎髪灼眼の討ち手もかくやと言わんばかりに違いない。 「実は前から『私の方から』ってシチュエーションに憧れてたんだよね。 大体身長差があるから、私がいくら背伸びをしても、かがみが屈んでくれないと届かないしさ」 そういってこなたはわたしの額に唇を寄せた。 「こういう風に、私がかがみより高い位置からするっていうのも一度やってみたかったんだよね」 こなたに触れられたところが更に熱を増す。 今なら熱光線すら発射できそうだ。 顔や耳、首どころか髪の毛まで真っ赤に染まりそうなわたしに、こなたは優しく微笑んだ。 「かがみ可愛い」 「あう…」 これが止めとなったのか、わたしは完全に身体の力が抜け、こなたに向かって倒れこんでしまった。 そんなわたしを胸で受け止めて抱きしめると、こなたはものすごく嬉しそうな声を上げた。 「いや~かがみは受けに回ると本当に弱いなぁ。 いつもと逆の立場にいるせいか、なんだかイケナイ感覚に目覚めそうだよ」 たしかにその気持ちもわからなくもない。 こうやってこなたから積極的に抱きしめられるのも、いつもと違うせいか新鮮に感じる。 心臓の鼓動もいつものスピードより遥かに早いビートを刻んでいるのがわかった。 何しろ自分の鼓動が聞こえるほどだ。 (でも、『こういうこと』に関しては恥ずかしがり屋のこなたにしては、今日はやけに積極的ね。 いつもならすぐ真っ赤になって力抜けちゃうはずなのに) そんな風に考えた瞬間、耳元で聞こえる鼓動の音が二種類あることにわたしは気づいた。 耳の動脈から聞こえる音と、それよりも早い音。 前者はわたしのものだから後者はつまり―― そのことに思い至った時、わたしはこなたの肩に両手をおいた。 そしてゆっくりと膝を立て、こなたの驚いた瞳に自分の視線を絡ませる。 わたしはもうほんの少し後でこなたに良いことを教えてあげようと決めた。 背を伸ばさなくても済む方法を、その実演も交えて。 (それにしても今日は二人きりでよかったわ) 『いつものように』目を閉じるべきか、それとも今日のこなたのようにするべきか考えながら、わたしは心の中でそう呟いた。 終了 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(^_-)b -- 名無しさん (2023-05-13 14 01 04) ヤバいツボだわ(´ω`*) -- 名無しさん (2011-02-11 23 33 38) GJ! -- 名無しさん (2010-03-19 17 34 12) 悪くない -- リバー支部 (2010-03-19 12 01 00)
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広い、広い、どこまでも続く青い空。 8月上旬という暑さを優しく和らげてくれる風が私たちを撫でていく。 見渡す限りの草原と、草原のはるか向こうにわずかに見える山々。 私とこなたは、そんな場所を二人で歩いている。 『風の魔法』 ”せめてコレくらいは済ませておきなさいな” そんな台詞と一緒に渡されたのは、結婚式の段取りの書かれた用紙と旅行のパンフレット。 今まで頑張った私たちへのご褒美だと、お母さんは笑って渡してくれた。 こなたと私の、結婚式と新婚旅行。 身内の、それもほんのごく一部だけの慎ましやかな式を上げたあと、私とこなたはこの場所に来た。 こなたと繋がる右手はそのままに、あまった左手で青空を彩る白い雲をつかんでみた。 「かがみー」 「んー?なあに、こなた」 当然つかめるわけも無く、でも何かの手ごたえを左手に感じる。 「来て良かったね」 そんな事を言ったこなたを見ると、その幼い外見からは不釣合いなほど綺麗な微笑みで私を見ていた。 あれから、少しだけ月日が経って。 私たちの逃避に終わりの日が来た。 あの日、電話越しに聞いた母との会話は今もハッキリ覚えていて、きっとこの先も忘れる事はないだろう。 『かがみ・・・そろそろ帰ってきなさい』 『父さんと母さんが認めてくれるなら、今すぐにでも帰りたいわ』 『・・・辛くないの?』 『・・・・・・辛いに決まってるじゃない』 『確かに、父さんや母さんの言うとおりだったわよ・・・・・・皆、私たちのことを軽蔑するか引いて接するかだわ』 『・・・まだまだ、もっと辛い事も起こるわよ?』 『・・・うん。分かってる、つもり』 『それじゃあ』 『でも』 『・・・』 『でも、こなたと二人で耐えてきたわよ。今まで』 『耐えられるのは今だけよ』 『そんなことないっ』 『耐えてるならいつか無理がくるわ。5年先か、10年先か・・・20年先か』 『・・・』 『若いうちはまだ良いわ。でもね、ある程度年がいくと後戻り出来なくなるのよ』 『そのとき、きっと二人とも後悔するわ・・・それからじゃあ遅いのよ』 『後悔なんて・・・』 『周りに味方は居ない、血の繋がる子供も居ない。たった一人だけを頼りに生きていくなんて、無理なのよ』 『私だって、そんなの分かってる!』 『だから、母さんに、みんなに分かってもらおうとしたんじゃない!一生懸命説得したじゃない!』 『・・・』 『この状況のままでこの先どうなるかなんて、大体の見当はついてるわよ!・・・私も!こなたも!』 『でも、分かってくれなかったじゃないっ、こなたと別れさせようとしたじゃない!』 『かがみ、別に別れさせようとしたんじゃないわ。ただ、恋人にするのは』 『一緒よ!”好きなのはかまわない、でも恋人になるのはダメ”なんて、別れろって言ってるようなものよ!』 『・・・かがみ』 『何回も言ってるけど、もう一度言うわね』 『私とこなたの仲を認めてくれるまでは、絶対に帰らない』 「ほんとねー。すっごく気持ちがいいわー」 「いくら標高が高いとはいえ、とても8月の暑さとは思えないよー」 「そうよねぇ。吹いてくる風もすっごく涼しいし、ほら、見てっ」 空を見上げ、左手でもう一回雲を掴む。 「ふふっ。ゲットっ」 なんて、柄にも無いくらいおちゃらけて、横に居るこなたに笑顔を向けた。 『・・・・・・』 『これは、こなたとの約束なの。みんなが認めてくれるまでは絶対にあきらめないからね』 『・・・・・・覚悟はもう出来てるのね?』 『そんなの、そっちを出るときに済ませてるわよ。最悪、一生帰れなくても諦めない』 『・・・』 『・・・だから、まだ、帰れない』 「おやおやー。今日は何時に無くデレてますなー。かがみんや」 そういって、私の前に回りこみながらからかい始めた。 「だぁぁぁ!だからデレとか言うなって何回も何回もっ、それこそ高校の頃から言ってるだろうがー!」 「だってツンデレがかがみの基本仕様じゃーん」 「しつこーい!」 お知りの辺りまである髪を風にたなびかせながら、こなたは私をからかっては逃げる。 それを、私が怒鳴りながら追いかける。 あの頃の光景そのままに。 ・・・少しだけ、違う現在を見せて。 「うりゃあ!」 「んにゃ!?」 私から逃げるのに、決して解かない繋がれた手。 それは、こなたと私の色々なものを表している。 これが今の私たち。 そして、何時ものように逃げるこなたを、何時ものように引っ張って自分の胸に引き寄せた。 『・・・うん。分かったわ』 『・・・』 『じゃあ、帰ってらっしゃい。かがみ』 『・・・は?』 『お父さんは、もう許してるわ。こなたちゃんのお父さんも、みゆきちゃんも・・・当然、お母さんもね』 『・・・・・・・・・ほんとに?』 『本当よ。ずっと前からみんなで集まって話してたのよ。二人を認めるか認めないのかってね』 『・・・・・・・・・ほ・・・・・・とに?』 『信じなさいな。・・・漸くみんなの意見がまとまったの。この前だけどね』 『かがみの覚悟が本物なら、認めてあげようって』 『・・・こなたは?』 『大丈夫よ。かがみの後にこなたちゃんも電話するんでしょ?その時に泉さんから同じ事を直接言われるはずよ』 「んぎゅ・・・えへへ。かーがみん」 「ふふふ・・・こーなた」 左手でこなたを抱え、こなたの右手が私の首に回ると、それが合図となって私とこなたの唇は優しく重なった。 あの後、電話BOXから出てきた私を見てこなたは酷く驚いていた。 こなたに言われて、私は、自分が泣いていることを知る。 色々心配してくれるこなたを無理やり電話させ、私はBOXの横で止まない涙と格闘しつつこなたの様子を見ていた。 そして、こなたが私に弾けたように振り向くやいなや、笑顔で、やっぱり涙を流してくれた。 広い広い空を見ながら、私たちは草原に実を預けている。 風がそよぎ、雲が流れ、光がそそぐ。 なんて、素敵な瞬間なんだろう。 「こなたー」 「なーに?かがみ」 「私たちってさ、子供作れないでしょ?」 「そだねー。私が性転換してアレくっ付けても無理だねー」 相変わらず一言多い奴だ。 「多分、養子とかも難しいと思うのよ。日本じゃあね」 「日本人はまだ固いからねー。レズの夫婦に養子は流石に認めないかなー」 教育上がどうのこうのとかで、ね。 「だからさ、せめてなにかペットでも飼おうよ」 「ペットかー・・・犬とか猫とか?」 うん。それも良いし、インコとか九官鳥とかの鳥類でも良いわねー。 そんな私にこなたは楽しそうに同意してくれた。 「まぁ、何を飼うかはゆっくり考えようよ。時間はたっぷり出来たんだからさっ」 「ふふ、そうねっ。今はこの旅行を満喫することにしましょうか!」 そういって、私がこなたの右手の甲にキスをすると、こなたは私の左手の甲にキスの返礼。 そして、久しぶりに見る家、久しぶりにくぐる玄関・・・久しぶりに顔を合わせた、家族、友人、小父さん。 私は、お父さん、お母さん、そしていのり姉さん、まつり姉さん、つかさの順に抱きしめてただいまと伝えたのだ。 そして、そこで一つだけ約束を交わした。 『二人の関係は、絶対に秘密にしなさい』 『私たちはかがみとこなたちゃんの関係を認めるけど、周囲も認めるとは限らないでしょ?』 『かがみさんと泉さんの関係がこの先どのような形になったとしても、これだけは守って欲しいんです』 『こなた、これはね、二人を守るために絶対守って欲しい事なんだ・・・今なら、分かるだろう?』 うん、分かる。 二人で生きてきて、嫌になるほど理解させられたから。 これは、私たちだけでなく、私たちを許してくれた皆のためにも必要な事。 こなたと私は、当然、固く約束した。 「さて、かがみん。向こうに見える丘まで行って見ようよ」 「おー、いい感じに展望台っぽくなってるわね。見晴らし良さそう」 今の位置より高いところにある丘の頂上から見るこの草原を想像しつつ、私はこなたに引かれるように歩き出す。 「こなた」 「なーに?かがみ」 今更だけど、定番過ぎて面白みの無い言葉だけど。 なにより大事な言葉だから、万感を込めて伝えよう。 「大好きよ・・・心から愛してるわ。本当に、今、幸せよ」 そんな私に、こなたは最高の言葉を私に返してくれたのだった。 揺れるカーテンの隙間から零れる日差しが私の顔を照らす。 クーラーは体に悪いからと、開けた窓から入り込む風が気持ちよく私を凪いでくれる。 「・・・・・・また、この夢」 土曜日。 とくに出かける用事もなく、無理に外出してお金を使うのもアレだなーという事で、こなたと二人でゲームで遊んでいたのだが。 お父さんとお母さんが用事で近所まで出てしまい、いのり姉さん以下3人の姉妹は揃って用事で外出中。 家は私とこなたの二人だけとなった。 ・・・・・・気を使われたのだろうか。 こなたは二人きりだと凄く甘えてくる。 私もそんなこなたが愛しくてたまらないので、キスをしたりしながら寝転がっていたのだが、どうやらそのまま寝入ってしまったらしい。 こなたはまだ、私の右手を枕にして寝息を立てている。 それにしても。 「2回目・・・ね」 最初に見たのは月曜だっけ? 私とこなたが二人で逃げる夢だったかな。 まったく、とんでもない夢だった。 「今のは・・・・・・・・・割と、良かったわよね?」 自分に言い聞かせるように、疑問系でつぶやく。 うん。なんか、すっごく幸せな夢だった。 なにより、こなたと一緒に幸せだというのが最高だ。 右側に寝るこなたの頭をゆっくり撫でながら、前回と違った夢をかみ締めていた。 「・・・やっぱり、夢ってそのときの心理状況が影響するのかしらねー」 月曜日。 放課後みゆきやつかさに集まってもらい、こなたとの関係を伝えた。 火曜日。 こなたのお父さんとゆたかちゃんに、二人揃って伝えた。 水曜日。 お父さんとお母さん、いのり姉さんとまつり姉さんにこなたと二人で伝えた。 流石にこなたのお父さんや私の両親には少し渋い顔をされたが、それでも認めてくれたのだ。 何より、夢と違ってみゆきが正面から受け入れてくれたのが嬉しい。 あんな夢を見た後だから凄く怖かったのだけど、それでも自分の気持ちやこなたとの関係への覚悟をしっかり伝えた。 それが良かったのかもしれないわね。 不安だった先週と、幸せな現在。 夢の中の私たちは本当に幸せだったのだ。 つまり、今の私も本当に幸せなのだろう。 ・・・ちょっとこじつけっぽい感じだけど、ま、いっか。 窓から、少し強めの風が入り込んできて、私の髪がこなたの顔に覆いかかる。 その髪がこなたをくすぐったからだろうか。 「・・・んにゅ・・・・・かがみ~?」 こなたが目を覚ました。 目を擦りながら私を見、すりよって来る。 「おはよう、こなた。良く寝れた?」 うんー。と、寝ぼけ眼で返事してくるこなたに、私は先の夢を話してあげようと思った。 こなたはどんな感想をくれるかな? こなたの反応に淡い期待を持ちつつ、私はこなたを抱きしめながら話しかけたのだった。 「こなた、あのね」 ‐8月初頭、窓から入り込む風が送り届けてくれた昼下がりの素敵な夢とひとときのこと‐ 劇終 コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(*´ω`*)b -- 名無しさん (2023-01-06 22 57 25) いいねー、すごく甘くて幻想的で不思議な気分になりました。 こういう作品もっと読んでみたいです! -- 名無しさん (2008-11-12 09 42 20)
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技名 ASIDEMATOI/床置き一回転飛行機 演技者 ASIDEMATOI/床置き一回転飛行機 説明 けん先を向こう側に向けて床の上に置き、けんを引っ張り上げて一回転飛行機の回転でさす。 備考 置いたけんの向きが逆だと裏飛行機の向きで回転します。 タグ 飛行機 コメント 名前
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こなた「ハイヨー!かがみん!」 かがみ「わたしゃ馬か!」 こなた「手綱みたいなのもついてるしさー♪」 かがみ「ちょっと!それ(ツインテール)引っ張ったら本気で怒るからな!」 つかさ「わあ!こなちゃんおんぶー」 かがみ「つ、つかさ!?」 こなた「やふー、つかさ。馬上から失礼する!」 つかさ「それにしてもおんぶなんてどうしたの?」 かがみ「ホ、ホラ!こなたが足くじいちゃたみたいでさ!」 つかさ「え!こなちゃん大丈夫なの?」 こなた「大したことはないのだよー」 かがみ「ね、念のため保健室にまで連れて行こうと思って」 つかさ「それにしてもどうして足くじいたりしたの?」 こなた「それはだね……」 かがみ「ホ、ホラ!早く行かないと!じゃね!つかさ!」 こなた「のわあ!私の愛馬は凶暴ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……(物凄い勢いで遠ざかっていく感じ)」 つかさ「どんだけー」 かがみ「……(言えないわよ。まさか、夕焼けまぶしい放課後の教室なんてシチュでこなたに告白されて感極まってつい押し倒しちゃったなんて……)」 こなた「……かがみんや」 かがみ「……何よ?」 こなた「……さっきのは本気だからね……」 かがみ「……わかってるわよ」 こなた「……かがみの背中あたっかくて心地いいよ」 かがみ「……何よ急に///」 こなた「……あのさ、このままウチまで送ってってくれたりしない?」 かがみ「流石に街中では恥ずかしいって……」 こなた「……今日お父さんもゆーちゃんも居ないからウチまで送ってくれたらさ……さっきの続きできるじゃん……?」 かがみ「こなた」 こなた「な、何?」 かがみ「しっかりつかまってなさい!」 こなた「ちょ、かがみ!速い!速いって!」 こなた(ホント、ニンジン目の前に吊るされた馬みたいだ……) その頃… つかさ(はう~。figmaこの三人だと私ばっか一人だよ。早くゆきちゃんもでないかなあ……) みゆき(つかささん……もう少々お待ち下さい……) だっこへ続く コメントフォーム 名前 コメント
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「かがみん~。飲み物とって来るけどお菓子、何が良い?」 今日も今日とてこなたの家に遊びに来てる私。教室が違う私達はせめて、放課後一緒に帰ってお互いの家に遊びに行くのを日課にしている。 「え~とっ、ポッキー…いい、お菓子要らない。飲み物もジュース以外で」 そんな私の言葉にこなたの顔はニヤニヤ顔。 「かがみんはまたダイエットですか?」 「…そうよ。悪い?」 べっつに~、とドアを開けてキッチンに向かおうとするこなた。 全く…、普段から体重の事気にしてるのに、こなたの家に来ると何故かお菓子食べちゃうのよね。お菓子の事なんて考えないように今日買ったラノベでも読んでよう。 私はベッドに腰掛けて本を読み始める。 ふと、目を移すと枕が見えた。 周りを確認。 階段の登って来る音もまだしない。 「疲れたから寝っころがって読もうかな」 自分への言い訳完了。 私はこなたの枕に顔を埋める。こなたの匂いに包まれてウトウトしていると後ろから何やら気配が… 私は慌てて起きてドアの方に振り返る。 「あれあれ~?かがみん、お疲れですか?」 いつから居たのかお盆に飲み物とお菓子を乗せて、こなたがおもいっっっきりニヤけた顔で立っている。 「ちょ、ちょっといつ部屋に入って来たのよ!」 「んっ?かがみが『こなた~。好き、大好き』って私の枕に頬擦りしてた所から」 「アホかッ!誰がそんな事…」 多分、私は顔を真っ赤にしてると思う。ベッドから降りてクッションに座りなおす。 「…ちょっと、お菓子要らないって言ったじゃない」私は照れ隠しにちょっと怒った感じでこなたにそんな事を言ってしまう。 「これは私の分。テレテテッテテ~。冬季限定ポッキー!」 何故かこなたはお盆に乗ったポッキーを一旦背中に隠してダミ声でポッキーを私の前に突き出す。 「…ふ~ん。別に要らない」 「本当かい?かがみ君」 「…要らない」 「この近所にはもう無かったよ」 「……一本だけ食べる」 こなたはしきりに仕方がないなぁ~かがみ君はとか、僕が居ないと何も出来ないとか、訳の分かんない事を言っている。 「じゃあ『ポッキー食べたいよコナえもん』って情けない感じで言って」 「何でよ…」 「言わなきゃあげない」 私は溜め息を一つついて 「ポッキー食べたいよ。コナえも~ん」 …悔しい。こなたに遊ばれてる。私は怒りを押し止め魅力的な限定ポッキーなる物に手を伸ばす。 ひょい。 手を伸ばす。 ひょいひょい。 …手を伸ばす。 私の手をかいくぐるポッキー。 「ちょっとこなた!約束は守りなさいよ」 「守るよ。はい、かがみんめしあがれ」 ポッキーを一本取り出すとおもむろにポッキーの端を口にくわえるこなた。 「…それを食べろと?」 嬉しそうに顔を縦に降るこなた。 「…私をからかった事。後悔するなよ?」 両手でがっしりこなたの顔を固定。驚くこなた。こなたに襲い掛かる私。 …失礼。こなたのくわえてるポッキーを食べる私。 「かがみの唇チョコ味だね」 「…うるさい」 こんな感じで毎日餌付けされてしまう私であった… 終わり コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-27 01 16 41)
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「かがみー、勉強教えてくれない?」 「あら、珍しいわね。テストが近いわけでもないのに、こなたが勉強しようと思うなんて」 「でもはら、私たちももう受験生なんだから、そろそろ勉学に励まないと、って思うんだよね」 「へえ、やっとやる気を出したのね。もしかして、志望校とかも決めたの?」 「ううん、一応勉強しておいたら、大学の選択肢が広がるんじゃないかと思ってね」 「またそんな適当な目標を掲げて、すぐにやめちゃうんじゃないの?」 「大丈夫だって。じゃあ、明日かがみの家に行くから。明日は土曜日だし、宿題もいっぱいあるしね」 「ちょっとこなた、あんた宿題を処理するのが目的じゃないでしょうね」 「そんなことないって。ところでかがみ様。私めに数学の教科書を貸していただければ非常に有り難いのですが……」 「別にいいけど、あんた置き勉してるんじゃなかった?」 「この前持って帰ったんだよ。普段時間割なんてしないから忘れちゃって」 「ふーん、今度からはちゃんと持ってきなさいよ。はい。あ、でも次の次が数学だから休み時間になったらすぐ返してよね」 「分かってる分かってる。ありがとう、かがみ」 こなたは小走りで教室を出て行った。 それにしても、教科書を持って帰ったってことは、こなたも少しは勉強する気になったのだろうか。 柊家 「あ、そういえばつかさ、明日こなたが家に来て勉強する予定なんだけど、つかさも用事が無いなら一緒にやらない?」 「え、そうなの? でも明日私、ゆきちゃんにバルサミコ酢を使った料理を教えてもらうつもりなの。ごめんね」 「別に謝ること無いのよ。うーん、そうなると、明日はこなたと二人きりか。マンツーマンで勉強を叩き込んでやろうかしら」 土曜日になった。昨日早く起こしてと頼まれていたので、つかさを叩き起こす。つかさは寝ぼけ眼で出かける準備をして、九時半には家を出てみゆきの家に行った。 現在時刻は十時過ぎ。こなたはまだ来ない。 そういえば、こなたは何時に行くなんて具体的なことは言ってなかった気がする。もしかしたら、まだ寝ているのかもしれない。 こなたに限って約束を破るなんてことは無いだろうが、早く来て欲しい。 人間、友人が家に来る直前は、何も手につかないと思う。結局勉強も読書も何もせず、そわそわと部屋中を動き回っていた。 チャイムがようやく鳴った。やっと来たかと思いながら玄関に行く。 「やぁかがみ。外は暑いねー。砂漠で体力が減る理由が分かった気がするよ」 「こなた、遅かったわね。今まで何してたのよ。寝てたの?」 「そんなことないって。ちゃんと九時には起きてたよ。でもあんまり暑いからコンビニでずっと涼んでたんだよね」 「あんたねえ、人を待たせてるんだから、さっさと来なさいよ」 「いや~、ごめん。でもかがみなら、ずっと待っててくれると思うから、ついつい寄り道しちゃうんだよね」 「な、何言ってるのよ。まあ、とにかく上がって。冷房入れてるから」 「え、ほんと? やったー」 こなたは颯爽と部屋に向かって駆けていった。 「はぁ、現金な奴ね……」 テーブルを囲んで向かい合うように座る。 しばらくは黙って勉強を続けた。 私は集中してやっていたが、こなたは何度もテーブルに顔をうずめたり、後ろに倒れこんだりしていた。 「かがみんかがみん、宿題終わってるの?」 「え? ええ、終わってるわよ」 「じゃあ、答え写すからちょっと見せて」 「こなた、宿題くらい自分でやりなさいよ。勉強しないといけないとか言ってたのはあんたじゃない」 「でも宿題って、なんか無理矢理やらされてる感があってやる気が出ないんだよね。ゲームでもお使い要素が多いと萎えてくるし、やっぱり自主的にやるのが一番なんだよ」 「まあ、確かにあんたの言うことは分かるけど、もう高三なんだから、屁理屈ばかり言ってやらなかったら、将来後悔するわよ」 「今度からはちゃんとやるから、今日だけ貸してよ~」 「あんたのために言ってあげてるのよ。とにかく、絶対に貸さないからね」 「かがみんのいじわるー。私の頭じゃ全然わかんないんだよぉ。う~~~」 こなたはテーブルに顎を載せてうなり始めた。 それを見てると、自然と笑みがこぼれてくる。 「あー、もう分かったわよ。私が教えてあげるから。でもちゃんと、自分の力で解くのよ」 「ほんと? いやー、かがみんは優しいなー」 こなたはすぐに体を起こして喜んだ。私の言葉で一喜一憂しているのは、見ていてなんだか楽しい。 それにしても、よく恥ずかしげもなく優しいなんて言えるものだ。私には到底無理なことだろう。 「ねえねえかがみ、これはどうすればいいの?」 「どれどれ、ちょっと貸して。あー、これね。これはこうして、ここをこうすれば簡単に解けるわよ」 「おぉ、さすがかがみん。伊達に努力してるわけじゃないねー」 「な、そんなことより早く教えてあげた問題やりなさいよ。自分でやらないと何の意味もないわよ」 「かがみん照れてるねー。さすがツンデレ」 「ああ、もう。馬鹿なこと言ってないでさっさとやりなさい」 そういえば、こなたはツンデレという性格をどう思ってるんだろう。 だらだらと問題を解いているこなたを見ながら、ふとそんな疑問が浮かんできた。 何考えてるんだろ、私は。 変な感覚を打ち払うように、目の前の問題に集中した。 「そういえばさ、最近大学に入る女子が増えてるせいで、結婚する年齢が上がってるらしいね」 「へえ、そういうことは覚えてるのね。……ところでこなた。あんた、結婚する気はあるの?」 「いきなり凄い質問をしてくるね……。 まあ、私は結婚しないというか、出来ないと思うよ」 「なんでそんな自虐ネタに走るのよ。こなたなら、その、結構モテるんじゃないの?」 「あー、よくいるよね。お互いを褒めあって安心する女子って」 「そんなんじゃないって。こなたは本当にモテると思うわよ。コスプレ喫茶でバイトもしてるんでしょ」 「まあ、そういう趣味の人には好かれるかもしれないけどね。それがモテるに直結するわけじゃないよ。それで、かがみんは将来結婚するつもりなの?」 「え? わ、私はそんなつもりないわよ」 「あれ? かがみ、男がいるんじゃなかったっけ?」 「それはあんたの勘違いでしょ。いるわけないじゃない」 「そんなに必死に否定するから怪しまれるんだよ。何か隠してるんじゃないの?」 「な、何も隠してないって。そんな無駄話より、さっさと勉強再開するわよ」 「……は~い」 私には男なんていないし、別に好きな人もいない。でも何故か、こなたに核心をつかれている気がする。 自分で自分がわからない。そんな感じだ。 今こなたは、両手で頭を抱えながら、問題とにらめっこをしている。口をへの字に曲げて、考え込んでいるようだ。 一度ため息をつく。こなたの観察ばかりしすぎだ。集中力が足りない。 脳裏にこなたの言葉が蘇る。 結婚はしない、出来ない、か。それを聞いて私は、残念がったのだろうか。それとも、喜んだのだろうか。分からなかった。 もう、自分で分かるのは手元にある数学の問題だけだ。しかし、今はそれすら手につかない。 こなたが突然四足歩行でテーブルの反対側にいる私のほうに歩いてきた。 「かがみん、これどうやるの?」 「ん? どうしたのよこなた。こっちにこなくても、教えてあげるのに」 「いや~、いちいちかがみに見せて、教えてもらってからやるより、同時にやったほうが早いと思ってね」 こなたがすぐ隣に座る。普通にしていても肌が触れ合いそうな距離だ。ここまで接近したのは初めてかもしれない。 シャーペンを握った手が震えている。こなたに勉強を教えようということに緊張しているのだろう。 どうやって教えたのかは覚えていない。しかし、こなたのノートにはきちんと回答が書かれていた。 「はー、これでようやく宿題が終わったよ。ありがとう、かがみ」 こなたの体が、右へと倒れる。私の膝の上に、こなたの頭が乗った。 「な、こ、こなた。いきなり何するのよ。びっくりするじゃない」 「ちょっと今日は5時までゲームしてたから、眠いんだよね。ちょうど一段落ついたし、一時間くらい経ったら起こしてよ」 「あんたまさか宿題だけして帰るつもりじゃないでしょうね」 返事は来なかった。よっぽど眠かったのだろう、くーくーと小さな寝息を立てている。 しかし、5時まで起きていたということは、こなたは4時間しか寝ていないということになる。 次の日のことくらい、考えておけばいいのに。 でも、眠いのを我慢してきてくれたのかと思うと、少し嬉しくなる。 独りになったのだから勉強に集中しようと思うが、どうしてもこなたのことが気になる。 正座した膝の上にこなたが頭を乗せているのだから、仕方がない。下手に脚を動かせば、落ちて頭を打つかもしれない。 シャーペンをテーブルに置いて、体を後ろに傾けた。両手で体を支える。 こなたは上を向いた姿勢で眠っている。 閉じられた目と、弾力のありそうな頬、柔らかそうな唇。今のこなたは本当に無防備だ。 ……っ、私は何を考えて……。 平常心を取り戻すために、一度深呼吸をする。 こなたはだらしなく両腕を左右に広げていた。今、目の前にはこなたの左手がある。 手を繋いだことはあっただろうか。 無意識のうちに両手がこなたの左手に伸びた。考える時間なんてなかった。 両手で包み込む。ほのかな温かみが手に伝わってくる。 しかし同時に自責の念に駆られる。寝ているこなたの手を触るなんて、どうかしている。 こなたは私を信用して体を預けてきているのに、それを裏切ったのではないだろうか。 でも、自分の気持ちを抑えることが出来ない。心臓が激しく脈打っている。体が火照ってくるのが分かる。 私とこなたの二人だけの空間。そしてこなたは眠りこけている。 触っていた左腕をゆっくりと床に戻す。 ゆっくりと、こなたの髪を撫でた。さらさらとしていて、くすぐったいくらいだ。 しばらくその長くて綺麗な髪を弄っていた。滑らかで、気持ちがいい。 こなたの寝顔を見る。口元は緩み、幸せそうな表情をしていた。つられるように笑みがこぼれる。 なんて言えばいいんだろう。こなたは、本当に可愛い。 震える手を、少しずつ顔に近づける。 人差し指で、優しく頬を押してみた。 ぷにっ 「ん~……」 「あ……」 こなたがそれに驚いたのか少し体を動かした。だが、まだまだ起きる気配はない。 ぽよぽよしていて、見たとおり弾力があった。柔らかい手触りだ。 「うぅぅ……」 こなたは私の指を避けるように、テーブルの方を向いて寝返った。 膝の傾斜で滑り落ちそうになったので、また仰向けになるように手前に寄せて向きを変える。 深呼吸を、ひとつ。 こなたを見下ろす。目は覚めていないようだ。あまりにも気持ちが良くて、我を忘れてしまっていた。 こなたの唇は、今むにゃむにゃと波打っている。 動悸が素早くなるのに合わせて、呼吸も荒くなってくる。 落ち着かせるように、ゆっくりと息を吐き、一気に吸い込んだ。 こなたの唇に、自分の唇を重ねる。 柔らかくて、温かくて、なんだか甘い感じがする。 「ん………」 今、私はこなたとキスをしてるんだ。これが、こなたの唇の感触なんだ。あぁ、こなた、こなた、こなた……。 「ん~、ん」 こなたが少し声を上げた。驚いて目を開ける。 目が合った。 「あ、こ、こ、こなた。お、起きてたの?」 慌てて顔を上げるが、もう手遅れだった。 「かがみ……私にキスしてた?」 「い、いや、その、それは……。ご、ごめんこなた。その、こなた見てたら思わず……。ほんとにごめん」 あー、私こなたに嫌われたかな。寝てる間にキスするなんて、最悪だ。 「……そんなに謝らなくてもいいよ」 「……ごめんね。私って最悪な人間だわ。こなたのことなんて考えずに……」 もうこなたと顔を合わせることも出来なかった。俯いた視線を横にずらす。 いきなり、首に温かい感触がきた。こなたが後ろから抱き付いてる。 すぐ横に、こなたの顔がある。 「大丈夫だよ、かがみ」 「え?」 「私は平気だよ。だから、自分を責めないで」 「どうして? あんなことされたら、普通……」 「私ね。……かがみのこと……、好きだよ」 時が止まったような、そんな気がする。 しばらく、どういう意味か分からなかった。思考がフリーズする。 ゆっくりと、言葉を理解していく。 ああ、そうか。こなたも……。 でも、こなたは私よりずっと正直で、純粋だ。 それに比べて、私はずるいな。 今までずっと、抑え込もうとしていた。隠れたところでこそこそやるだけだった。 ほんの少しだけでも、自分に正直に…… 「ねぇ、こなた」 次の言葉が喉に引っかかって出てこない。早く言えばいいのに、声が出ない。 こなたは何も言わない。ただ、私をきつく抱きしめてくれた。 温かいな……。 「あ、あのね……。私……」 もう一息。私は、こなたが好きだったんだ。 ようやく分かった。今まで自分に嘘をついて、心のどこかにしまいこんでいた気持ちが。 ゆっくりと外に出る。 「私も、こなたのことが、す……、す、す、好き」 ああ。真っ白だ。 「あはは、かがみん顔真っ赤だね」 「な……」 「まあ、かがみは素直じゃないから、すごく言いづらいよね。……ありがとう。嬉しいよ、私。 ……それにしても、口と違って体は正直と言うか」 「そ、それは……」 何も言い返せない。でも、そんなのどうでもよかった。 とにかく、嬉しかった。 「かがみも結構大胆だよね~。奥手かと思って……はむっ!」 こなたに抱きついて、そのまま床に倒れこんだ。 また、こなたにキスをする。 ゆっくりと、こなたの口の中に舌を入れた。 こなたの舌と絡めあう。ゆっくりと、優しく触れていく。 「う……」 唾液と唾液が交じり合う。 これで、こなたと一つになれたような気がする。 こなたは目を瞑って震えている。 それでも、私を受け入れてくれている。 こなた……、ずっと一緒だよ。 何分経っただろうか。時間の感覚が分からなくなっている。 息苦しさを覚えて、唇を離した。 「うぅぅ……。かがみぃ、苦しいよぉ……」 こなたは仰向けのまま動かない。息が荒くなっていた。 「こなた、ごめん。大丈夫だった?」 「なんだか、わけが分かんないよぉ。すごく、変な気持ち……」 こなたの隣で同じように横になる。 両手で抱きしめて、引き寄せる。 「かがみ……?」 「こなた、あのね……」 言いたい事はいっぱいあった。何から言っていけばいいのかも、分からないくらいに。 でも、もう言葉なんて要らないかな。 もう一度、強くこなたを抱きしめる。 こなたも、私をきつく抱きしめてくれる。 わたしとこなたの、二人だけの時間が始まる。 コメントフォーム 名前 コメント GJ! -- 名無しさん (2022-12-15 03 15 56) ↓慣れればかえって一人のが楽だぜ…寂しいことに変わりはないが。 -- 名無しさん (2013-02-15 15 18 38) あああああ、ここにいるみんなにバレてるよ、かがみん -- ぷにゃねこ (2013-02-07 19 07 43) ↓俺がこんなに!? -- 名無しさん (2012-12-21 11 16 52) フラグ来た……!? -- かがみんラブ (2012-09-23 14 42 10) ↓ 本人乙ww ぼっち残念ww -- 名無しさん (2010-09-21 18 53 57) ↓貴様らとは美味い酒が呑めそうだ。 -- 名無しさん (2010-09-16 12 35 15) ↓おまえらもかブルータス -- ちんぽっぽ (2010-09-13 21 24 36) ↓おぉ我が兄弟よ、お互い辛いのぉ -- 春我部 (2010-04-15 01 21 06) ↓泣くな同志よ -- 名無しさん (2010-04-14 15 52 44) 二人だけの時間が始まる、か…。 俺は一人だけの時間が終わって欲しいぜ。 -- 名無しさん (2009-12-05 23 19 22)
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「おい、…の二人。結構…愛くね?」 「こ…制服、陸桜…園の…よな」 「妹…とか…て…な」 私たちと話している男性とは別の何人かがこちらに視線を向けてなにかを話している。 全ての会話を聞き取ることはできなかったが、私たちに関して何かを相談している様に聞こえた。 「なぁ、袖触り合うも多生の縁っていうしさ。これからお茶でもどうだい?」 正面の男は私たちを見下ろしながら誘う様な口調でそう答える。 この一言を聞いた私は肝が冷えるのを感じた。こんな時間に、こんな状況でお茶? どう考えてもまともな人間の対応とは思えなかった。この男たちは危ない。 女の感とでも言えば良いのだろうか。私の中の何かがそう信号を発している。 とにかく謝罪はしたんだし、これ以上この場に留まるべきではない。 「い、いえ。私たち家に帰るところなので失礼します」 私は相手の返事を聞く前につかさの手を強引に引き、この場を立ち去ろうとする。 しかし、 「まぁまぁ、そう言わずに良いじゃん。この近くに良い店があるんだ。 絶対楽しいからおいでって」 「お姉ちゃん!」 「つかさ!?」 つかさは男の一人に腕を掴まれていた。なんとか男の腕を振り払おうとするが、 力で敵うはずもなく、逆に両腕を押さえ込まれてしまう。 この時、つかさの制服のポケットから何かが落ちたように見えたが、 そんなことを気にしている余裕は無かった。私がつかさを掴んでいる男の手を 放させようと近づくも、今度は私が別の男たちに右腕を取られる。 「別に良いじゃん。さ、お姉ちゃんの方も一緒に行こうぜ」 女の私相手に男二人掛りで両腕を取られ、完全に動きを封じられてしまう。 「くっ! 離してよ!」 「おい。ここじゃ人目に付くから、そこの裏道へ連れ込め」 私たちは先ほど私が向かおうとした細道へと無理矢理連れ込まれる。 抵抗しようにも完全に両手を取られ、全く動かせない。つかさも似たようなものだ。 どうしてこんなことになってしまったのか。抵抗も空しく私たちは明かりの無い 漆黒の闇の中へと連れ込まれていった。 私たちが連れ込まれた場所は行き止まりの一本道だった。 壁の向こうは倉庫か何かだろうか。壁の高さも優に4 mはあるだろう。 民家は無く助けも呼ぶこともできそうにない。唯一の退路も男たちが立ちふさがっており、 男たちが並ぶ道の奥から、明かりが僅かばかり見える程度。 つかさも今の状況に恐れを感じているのだろう。私にぴったりとより付いている。 私たちは完全に袋の中の鼠だった。 「ちょっと! ここは何処よ! こんなところに連れてきて、私たちをどうするつもり!?」 震えるつかさを抱きながら、わたしはできる限り腹の奥底から大声を張り上げた。 それは気持ちのうえでは負けないという意味での足掻きでもあったし、 万が一にもこの声を聞いた人が助けてくれるのではないかという淡い希望があったからだった。 「別にどうもしねぇよ。俺たちはこれからみんなで遊ぼうってだけさ」 「ふざけんじゃないわよ! 警察を呼ぶわよ!?」 「呼びたければ呼べば? 呼べればの話だけどな」 男の一人が口元を歪ませながらせせら笑う。私は自分のポケットから素早く 携帯電話を取り出し警察への電話を試みる。が、気持ちが焦りなかなかボタンを 押すことができない。その途端、男の一人が私たちの前に立つ。 私が男を見上げた瞬間、頬を平手打ちされてバランス感覚を失った。 「あぅっ!」 男に叩かれた私はその勢いで斜め後方によろめいてしまう。視界には壁が迫っており、私は壁に 手をつけて激突を防ごうとするが、間に合わずに頭を打ち付けてその場に倒れてしまう。 「お姉ちゃん!!」 つかさが悲鳴を上げながら、私の元に駆け寄ってくる。私はつかさに心配をかけないよう 体を起き上がらせようとした時、左目の上に位置するあたりに痛みを感じる。 その部分に触れてみると赤い液体が指に付着し、それが私の血だと判断するのに 時間は掛からなかった。だが痛みはさほどでもないし、指に付着した血の量から 見ても傷自体も深くは無さそうだった。軽症で済んだことに安堵しながら 私は現状の確認を行おうとするが、既に私の携帯電話は私を叩いた男の手の中にあった。 おそらく叩かれた時に手元から落ちてしまったのだろう。私は軽く舌打ちをした。 「あ、あれ? 私の携帯が、携帯が無い!」 つかさも私を真似ようとしたのだろう。しかし肝心のつかさの携帯は無いらしい。 「何処かに落とし――」 私がつかさに問いただそうとした時、男たちに連れ去られそうになった時の 映像が私の脳裏に蘇る。つかさが必死に抵抗する中、ポケットからするりと落ちた 小さな物体。あの時、つかさのポケットから落ちたのが、携帯電話だったのか。 「残念。警察に電話はできませんでした。さぁ、どうする?」 「ゲヘヘ」 男たちの薄汚い笑い声が聞こえてくる。なんて目をしているのだろう。 こちらを凝視する男たちは傲慢さを漂わせ、その舐めるような視線に不快感を覚えながらも 私は男たちを睨みつけた。腫れ上がった頬に手を当てながらこの状況を打破するために 頭をフル稼働させて思考する。しかしこの圧倒的に不利な状況でそう簡単に解決策が 出るはずもない。 その時、未だ立ち上がれずにいた私の正面につかさが立ち、 両腕を大きく横に開いて私を庇った。 「つかさ!?」 「お姉ちゃんに乱暴しないで!!」 あの時と同じだ。わたしが中学校の同級生から嫌味を言われた時と。 この子は本当に、私のためなら恐いものなんて無くなるんだな……。 未だ足がすくんで動けない自分が情けない。こんな状況下においても私のために 体を張れるつかさは私なんかよりもずっと勇敢だと思えた。 ほんの少しだけ淡い希望のようなものを抱いた気がしたが、それは幻だったと思い知らされる。 「その目、生意気だな!」 「あ!」 「つかさぁ!!」 私の前に立ったつかさは私の時よりもさらに強く平手打ちを放たれて、つかさは そのまま倒れかけるが、幸いにもつかさは動けなかった私の上に落ちる。 私がつかさのクッション代わりになることで、コンクリートの地面に叩きつけられることだけは 回避できた。私は目を閉じてしまっているつかさを抱きかかえた。 「つかさ、つかさ! しっかりして!!」 必死につかさの名前を呼び掛けるが、私の言葉に反応は無い。 まさか、つかさを支え切れずどこかを強く打ちつけてしまったのだろうか? 打ったとしたら頭? 体? どうしてつかさは何も答えてくれない? 気を失ったの? それともまさか……。 私の心の支えでもあったつかさの現状に私の思考は混乱し、只々つかさを 何とかしなければとしか考えられなかった。 「怯えることぁねぇよ。俺たちはただ遊ぼうって言ってるだけだぜ?」 あまりにも人を馬鹿にしている。つかさをはり倒した男に私の中でどす黒い炎が 燃え上がる。私はつかさを地面に寝かせて、つかさを攻撃した男に我を忘れて立ち向かった。 「あんたのせいで!!」 激昂した私は不慣れながらも、力を込めて男の顔面に左手で拳を振り下ろそうとする。 しかし、私の全身全霊を込めたその攻撃は、儚くもあっさりと受け止められてしまった。 「所詮女の力じゃこんなもんよ」 私は男にボディブローを打ち込まれて、一瞬視界が暗転する。 そのまま数歩後退してつかさの傍に倒れてしまった。 「が――は……」 腹部からの激痛に私は悶えて呻き声が漏れる。 何故私やつかさがこんな目に合わなければならない……。 私たち姉妹がいったい何をしたというのだ……。悪が弱者を蝕むこの世界は、 どうしてこんなにも理不尽なんだ……。 男たちは、ゆっくりと私たちに歩み始める。その姿は、何日も肉にあり付けなかった 猛獣のように見えて、それが私を一層恐怖で縛り付けた。全身から感じる恐怖に 私の瞳が涙の膜を浮かべ始める。 恐い、恐いよ……。お父さん、お母さん、姉さん、 日下部、峰岸、みゆき、こなた……。誰か…誰か助けて……。 「や……やめて……来ないで!」 私は目を開かないつかさを抱きかかえて、後ろに下がろうとする。 しかし完全に腰が抜けてしまった私は、つかさを引きずりながら 動くことはできず、その場で叫ぶことしかできなかった。 「来ないで! 来ないで!! 来ないでぇ!!!」 先程の男の手が私たちを掴もうとする。私は目を閉じて思わず神に祈った。 私は現実主義者だ。この世界に不条理なことがたくさん起きていることは知っていたし、 神社の娘でもある私だが、本気で神様がいるなどとは今まで一度も考えたことは無かった。 そんな私でもこの様な状況では祈るしかなかった。あぁ、人は心の底から絶望した時、 ありもしない神に救いを求めるのか……。 人は絶望した時、神に祈る。それは私たちが生まれるはるか昔から人が繰り返し 行ってきたことだ。戦争に絶望し、腐敗した国に絶望し、自分の大切な人を失った時、 人は神に救いを求め続けてきた。 しかし、私は現実主義者だ。他の人がどう思うかはともかく、私自身は 本当にいるかどうかも分からない神の救いを待つことはできない。 この世界で誰かが苦しんでいる時に、その誰かを助けることができるのもまた、人しかいない。 そう、人しかいないのだから。 「さぁ、そろそろパーティーの時――かはっ!」 突然、男が呻き声を上げた。何が何だか分からず、私はつかさを抱いたまま動けなかった。 その直後、何かが地面に叩きつけられた音が聞こえてくる。 「かがみ、つかさ、大丈夫? 怪我は無い?」 私はその声を聞いて胸が大きく高鳴った。私はその声の主を知っている。 あり得ない、この状況であいつの声が聞こえるなんてあり得ない。 だけど、私があいつの声を聞き間違えるなんて絶対にあるはずが無い。 私は瞳を恐る恐る開いた。涙でぼやけた視界の中で、私がよく知っている 人物がそこにいた。 膝まで伸びた美しい髪は月の光を浴びて青白い輝きを放っている。 風に髪を揺らしながら、緑色の澄んだ瞳が私たちを心配そうに見つめており、 陵桜学園の夏服の色と重ねて、全身に蒼を纏った少女はそこに佇んでいた。 「こ、こ……」 いったい何が起こったのか? 何故男は倒れているのか? どうして少女はここにいるのか? 判断のつかない私は、その少女の名前を掠れた声で呟くことしかできなかった。 「こな……た……?」 それは他の誰でも無い、私の一番の親友である泉こなたその人だった。 こなたは私とつかさの傍で膝をかがめて話しかける。 「かがみ、大丈夫? おでこから血が出てるよ?」 こなたは心配そうに私を見つめている。激変する状況に私の頭はついてこれなかったが、 憂いを帯びた表情でこなたに見つめられれば、空元気だろうと答えないわけにはいかなかった。 「え――あ、う、うん。さっき壁に頭を打ち付けちゃって。痛みは無いから、 多分今は……もう平気」 本当は痛みが無いというよりも、痛みを忘れていたという方が正しかったのかも知れない。 「他には? 他には何もされてない?」 「う、うん。お腹を殴られたけど、他は大丈夫……」 その言葉にこなたは一度目を伏せてから、つかさに視線を移した。 「つかさは?」 「つ、つかさは……。その、あいつらに叩かれた時に意識を失ったみたいで……」 「どこか強く打ち付けたりした? たとえば壁に叩きつけられたとか」 「ううん、それは多分大丈夫だと思う。つかさが地面に倒れそうになった時、 私がつかさを支えたから」 「見せて」 私が答える前に、こなたは私の腕の中から半ば強引につかさを抜き取ると、 つかさの口元に手を近付けて呼吸を、今度はつかさの左手首に指を当てて脈を測りだした。 「あ、あのさ、こなた?」 「何?」 私はすぐ傍でピクリとも動かずに倒れている男を指しながら訊いてみる。 「これ……あんたがやったの?」 「そうだよ」 何を驚いているの? とでも言わんばかりにこなたは淡々とした口調で答えた。 男の傍には先ほど奪い取られた私の携帯電話が転がっている。 こなたにとってはそんなことよりもつかさの体調の方が重要らしい。 それは勿論私もそうなのだが、先ほどまで私たちを襲おうとした男を、 私よりも一回り以上は大きい男を平然と倒したと言われても素直に頷くことは できなかった。そんな私の疑問など気づくこともなく、こなたはつかさの心拍に 意識を集中させているように見える。 今はつかさを優先すべきだと、少しずつ平静を取り戻しつつある私の理性が そう判断を下し、私はこなたとつかさを見守っていた。こなたが一連の作業を終えると、 次につかさの頭部、胸部、腹部、手足の様々な部分を慣れた手つきで調べていく。 冷静につかさの体調を調べられるこなたの様子を見ながら、 つかさが気を失った時に、慌てふためくことしかできなかった私は いったい何をしていたのだろうと自分自身の情けなさに心の中で嘆息していた。 「……うん。見たところ外傷は無いし、脈もある。呼吸も落ち着いてるから 多分気絶しているだけだと思うよ」 「そ、そうなの……?」 「絶対とは言えないけどね。多分大丈夫だよ」 こなたはつかさを私に預けると、その場で立ちあがった。 「ごめんね、かがみ。もう少し早く来ていれば、かがみたちにこんな思いはさせなかったのに……」 「こなた?」 「おい! てめえら俺らを無視してんじゃねぇぞ!」 仲間を倒されたことに憤怒しているのか、別の男が声を上げながらこちらに 近づいてくるのが見える。私は自分の心拍が跳ね上がるのを感じた。 「こ、こなた……」 「かがみはつかさの傍にいてあげて、後は……」 「聞いてんのか!? そこの青い髪の女!!」 男がこなたの肩を掴む。こなたは男に振り向きざまに相手の手首を掴むと一気に捻り上げた。 「うぐがぁぁ!!!」 男の顔に苦悶の表情が現われる。そんな男の様子にこなたは、滑り込むように 男の懐に飛び込み、顎めがけて打ち上げるように掌底を放った。 「!!」 こなたの流れるような一連の動きを目の当たりにした 私は言葉を失い、男はその場に倒れこんだ。 「後は私に任せて」 こなたは私に背を向けて真正面から男たちと対峙していた。私はこの時、本気で こなたは怒っているのだと感じていた。普段から喜怒哀楽をはっきりと表現する こなただが、口調だけなら怒りも悲しみも読み取ることができない。しかし、 5秒と掛からずに男一人をねじ伏せたその姿と相俟って、悲しいほどに淡々とした 口調はこなたの静かな怒りを体現しているかのように感じられた。 「この糞餓鬼! やりやがったな!」 「てめぇ!」 先ほどの状況に今度は二人掛りでこなたに襲いかかる。私たちを巻き込ませないように するためか、こなたも二人に向かって突撃する。こなたは一人目の蹴りを、身を屈めて かわし、ジャブ、ストレートの二連撃を当てて、男の一人をのけぞらせる。 その間に向かってきたもう一方の相手を捌く。 相手の右ストレートを難なく受け流すと、相手の鳩尾に拳を打ち込み、前のめりに なった相手の後頭部に、スカートなのも気にせず回し蹴りを直撃させて男をダウンさせる。 しかし、最初に連撃を食らった男が体制を立て直し、再びこなたに襲いかかる。 こなたは防御が遅れ、腹部に一発。左ボディブローをまともに浴びてしまう。 「こなた!!」 「もう一撃!」 こなたはよろめき、一歩足を下げる。男は二発目を加えようと大きく振りかぶって 右ストレートをこなたの顔面に放つ。だが再び構え直したこなたは、モーションの大きすぎる 相手の攻撃をかわすと同時に、カウンターで相手の顔面に左ストレートを 打ち込む。男は力なくその場に倒れこむが、先ほどの一撃が効いたのか こなたもまた、右手で腹部を抑えていた。 「こなた! あんた今……」 「大丈夫。急所には当たってないから」 私の言葉にこなたは気丈にそう答えた。いくらこなたが格闘技経験者といえども、 まともに一撃を浴びて効いてないということはないだろう。私は先ほど拳を打ち込まれた 自分の腹部を摩りながら、こなたの身を案じることしかできなかった。 「ほぅ、女のくせになかなかやるな」 今までの様子を黙って見ていた最後の一人がゆっくりとこなたに近づいてくる。 不気味に微笑んでいる姿に何故この男は今、笑っていられるのだろうかと疑問を感じた。 この男がどれほど自分の強さに自信があるのかは知らない。あの男がこなたに負けないという 精神的余裕を考慮しても、仮にも仲間4人を倒されて笑っていられるこの男たちは いったいどういう人間関係なのか不思議でならなかった。 明らかにこなたの力を舐めっている男は右手をこなたに差し出す。 「気に入ったぜ。どうだ、俺の女にならねぇか? 俺はおま――」 こなたは男の話が終わる前に問答無用で男の顔面に拳を一発打ち込み、男を一歩後退させる。 「く、くくく……」 しかし、先ほどまで男たちを次々と戦闘不能にしてきたこなたの攻撃を まともに受けたにも関わらず男は平然としていた。 「聞く耳すら持たないか。いいぜ、やってやるよ」 男はゆっくりと構えを取って臨戦状態に入った。 「なんで……? なんでこなたの攻撃が効いてないの?」 この男の様子に自然と疑問の声が口から洩れた。私の言葉に男は鋭利な視線を向ける。 その視線に私はつかさを抱いている腕に自然と力がこもる。 「けっ。柔な女のパンチなんざ気かねぇよ。今まで俺がどれだけの奴を ぶちのめしてきたと思ってやがる?」 「…………」 男はこなたに視線を戻すが、こなたは微動だにせず、真っ直ぐに男に構えていた。 この男が、どれほど喧嘩慣れしているのかは想像の域を出ない。 全体的にかなりがっしりとした体躯の男は、背丈も大まかに見積もっても 黒井先生より高く、180 cm前後はありそうだった。男の腕は丸太のように太く、 私よりも小柄なこなたにとってはこれだけでも大きなハンデであり、 急所にでも当たらない限り、こなたの力では男の纏う筋肉の鎧を破ることは不可能に思えた。 「てめぇみたいに気の強い女を力で無理矢理ねじ伏せるのも面白そうだ」 この台詞を合図に、こなたと最後の男との戦いが始まった。 先に仕掛けたのはこなたで、こなたはその小柄な体と、自慢の瞬発力を生かして一気に 相手の懐に潜り込み、肘打ちを相手の腹部に打ち込む。 男はそれを無視するかのようにこなたを捕まえようとするが、こなたは艶やかに 男の腕をすり抜けて、今度は腹部に蹴りを放つ。男もこなたに下から大きく拳を振り上げる。 しかしこなたは後ろに飛び跳ね、男の拳は空を切った。 こなたは自身のスピードを最大限に生かし男に攻撃を加え続ける。一方相対する 男の方はこなたの攻撃をもろともせずに、全攻撃が必殺となるであろう強力な一撃で こなたを狙う。男はその長身とリーチを生かし、こなたの全身を様々な角度から 狙っている様にみえる。こなたもまともに受ければ致命傷は免れないと判断したのか、 男の攻撃は全て回避しており、防御での対応は一切行っていなかった。その一進一退の打ち合いを 見ながら、こなたの攻撃は全てが男の腹部あたりへ集中していることに私は気づいた。 この戦いは不利だ。武術に関しては無知の私だが、そんな言葉が頭をよぎる。 こなたの攻撃に男は全く動じていない。対して男の攻撃をこなたは避けて対応するしかない。 一見するとこなたは蝶のように舞い、蜂のように刺すかのごとく男を攻撃してるように 見えなくもないが、それは、回避を最優先にしながら隙を見て相手の筋肉の鎧に さほど効きもしない攻撃を打ち込む以外に手立ては無いという劣勢の状態であった。 そんな打ち合いを固唾を飲んで見守っていた時、戦況に変化が起きた。こなたは相変わらず 相手の腹部を狙い、こなたの背丈からみて、ほぼハイキックに近いミドルキックを 男の腹部に打ち込む。その時、超絶な打ち込みに足がついていけなくなったのか こなたはバランスを崩し、回避が一瞬遅れる。男がそのチャンスを逃すはずもなく、 重い一撃がこなたの胸部に突き刺さる。こなたは激痛からか、口から唾液を零し 顔を歪ませる。駄目押しの二撃目を狙う男にこなたは大きく後方に 跳躍し、私たちのすぐ傍にまで下がった。 「こなた!」 「ちょ、ちょっとドジっただけだから、心配しないで」 こなたは口ではそう返すものの、左手で胸を押さえながらその場に片膝をついてしまう。 「てめぇの攻撃をいくら受けても俺はビクともしない。 しかしお前はたった一発でそのざまだ。まだやんのか?」 既に勝ったつもりなのか、男はあえてこなたに追撃をかけようとはせず、 その場に佇みながら勝ち誇った態度でこなたに問いただす。 「どうする? お前が俺の女になるならそこにいる二人は見逃してやってもいいんだぜ?」 私たちを指さしながら男はこなたにそう突きつけた。 こなたと引き換えに私たちを見逃すという男の要求に私は思わず声を荒げた。 「そんなの卑怯よ! 私のせいでこなたがあんたの女になるぐらいなら、 私は助けなんていらないわ!」 それは何も、ただの強がりとして言った言葉では無かった。こなたは私たちのために 身を挺して戦ってくれている。そんなこなたの思いを踏み躙って、自身の安全のために こなたを犠牲にするぐらいなら、私にとっては地獄に落ちるほうが遥かにマシな選択だった。 「なら、お前ら三人で運命を共にするか? その大事そうに抱えてる妹と一緒にな」 男は天を仰いで高笑いをする。嘲笑うような男の姿に私は唇を噛んだ。 「心配しないで。あんな奴の言うことなんか聞いちゃいけない」 こなたはゆっくりと立ち上がり、私に背中を向けたまま続ける。 「そもそも、女子高生を力ずくで襲うような輩の約束なんて微塵も信用できない。 仮に私が負けを認めたとしても、かがみたちが無事に帰れる保証なんてどこにも無い」 こなたは男に向かって歩き出し、男の前で構えを取る。それは戦闘を続行するという 意思表示に他ならない。そんなこなたの態度に男の眉が僅かに動くのが見えた。 「だから私がこいつに勝って、かがみたちを必ず無事に帰してみせる」 「こなた……」 「ちっ……。どこまでも頭の悪い女だ。できればその顔に傷は付けたくなかったんだが、 本気でやらねぇと理解出来ねぇみたいだな!」 こんどは男からこなたに仕掛ける。決して折れないこなたの態度にいらつきを見せた男は こなたの顔面目掛けて、容赦なくひざ蹴りを打ち込もうとする。 こなたは一歩だけ足を引いて身を交わす。 こなたと男の激闘が再開された。 相変わらず、こなたは腹部を中心に攻撃を行う。しかし、先ほどのダメージが残っているのか 男の攻撃を軽やかにかわしていた先ほどとは違い、常に紙一重で攻撃をかわしている様だった。 そんな中でもこなたは一歩も引かずに隙を見つけては巧みに応戦する。 対する男の方は、怒りで火がついたのか、こなたの頭部や顔面を集中的に狙うようになっていた。 こなたは回避だけでは体が追いつかないのか、一部の攻撃は防御で対応するようになり、 そのたびにこなたの顔は苦痛で歪む。 とうとう防御を続ける腕に限界が来たのか、こなたのガードを弾いて男の拳が こなたの顔面に直撃し、勢い余ってこなたは吹き飛ばされる。 背中から側面の壁に叩きつけられ、その場に崩れ落ちてしまった。 「こなた!!」 足手まといになると分かっていても、嬲り続けられるこなたの姿に耐えられなくなった 私は自分の通学カバンをつかさのまくら代わりにして、こなたに駆け寄った。 「だ、大丈夫。大丈夫だから……」 「何が大丈夫なのよ! 血が出てるじゃない!」 防御である程度はダメージを軽減できたとはいえ、顔に浴びた拳のせいでこなたは 鼻から血を流していた。さらによく観察すると、目の下なども赤く腫れあがっており 唇からも血が滲んでいる。私が見ていた以上にこなたは男から攻撃を受けていたことが分かった。 「多分、もう少しだと思うから、かがみは下がってて……」 こなたは自力で立ち上がった。まともに立っていることも辛いのか 上半身をやや前に傾けており、呼吸も荒々しい。それでもこなたは臆する様子もなく、 額に付いた玉のような汗を拭ってから、鋭い眼光で男を見据える。 「よくこれだけ俺の攻撃に耐え続けたもんだ。女にしておくのが惜しいぐらいだ」 悠然とした態度で男は私たちを見下ろしている。何かができるわけではない。しかし これ以上こなたが傷つくのを黙って見ていられなった私は、こなたの前に一歩踏み出て、 こなたの盾になろうとする。そんな私の姿にこなたは私の横に並ぶと、私の肩を掴む。 私がこなたに顔を向けると、こなたは血を流した顔で笑いながら首を横に振った。 その気持ちだけで十分だよ。こなたの瞳がそう訴えているように見えた私は 何もできない自分の無力さを痛感し、自分の歯を軋ませた。 「だが勝敗の結果は明らか。いいかげん――」 男が私たちに一歩を踏み出そうとした時だった。何が起きたのか、 男はその場でふら付いて倒れかかり、地面に手を付けた。 「な、なんだ……!?」 男はなんとか立ち上がろうとするが足元をふら付かせ、直ぐに膝と腕を地面につけて 立ちあがれないように見えた。男の様子がおかしい。私が疑問を感じているのと ほぼ同時に、こなたは男に向かって踏み込んだ。 200 m 25秒のタイムを軽く叩きだすこなたの脚力は、男に構える隙を与えずに、 加速をつけたこなたの拳が男の顎を捉える。 「ぐはぁ!」 こなたの攻撃に男が声を上げる。今までこなたの攻撃に動じなかった男が、 初めて見せた苦悶の姿に希望が見え始める。男が足を踏ん張らせて体制を立て直そうと するが、こなたはそうはさせまいと怒涛の連撃を仕掛けた。 正拳、肘打ち、掌底打、回し打ち。様々な攻撃法を用いてこなたは 相手の顔面目掛けて駄目押しをかける。男は不利な状況を打破しようと反撃を 仕掛けようとするものの、一切の行動を許さないこなたの連打を前に、 逆にこなたの攻撃をまともに浴びる結果となる。 およそ1分以上、こなたの拳の雨を浴び続けた男は、腰の入った 左ストレートを打ち込まれると、男はその巨体を吹っ飛ばされて仰向けに倒れこんだ。 「馬鹿な……! この俺が、こんな餓鬼一匹に……!」 男は懸命に立ち上がろうとするが体が動かないのか、地べたに這いつくばったまま、 起き上がることができずに、もがくことしかできなかった。 終わった……のだろうか? こなたは苦々しい口調で吐き捨てることしかできない男を 静かに見下ろしていた。その無様な姿に動けなくなったと判断したのか、 おぼつかない足取りでゆっくりと私の方へと足を動かす。 歩くのも辛そうなこなたの傍に私は駆け寄った。 「はぁ、はぁ……。や、やったよ。かがみ……」 こなたはその場に倒れかかるが、私がこなたを抱いて支えてあげた。 「こなた、しっかりして!」 「ご、ごめん。もう大丈夫……。でも、さすがに疲れた」 私に重心を預けていたこなただが、すぐに私から体を離して自分の力だけで姿勢を 正した。顔に受けた外傷は多く、こなたは肩で息をしている。 「ねぇ、なんで急にあいつの動きが鈍くなり出したの? 急に一方的な展開になったけれど」 今まで、一度もこなたの攻撃が効いているように見えなかった男だが、 たしかに動きが鈍くなった。それが何故なのか理解出来なかった私はこなたに問いかけた。 「ある意味では、一種の賭けだったんだけどね」 そう呟いたこなたは、最後に倒した男の方に体を向けると、呼吸を整えながら語り始めた。 「腹部、なかでも肝臓へのダメージってのはその場その場で来るものじゃなくて 少しずつ蓄積されていくものなんだよ。あいつは私の攻撃なんて効いてないって 言ってたけど、多分効いてないって思いこんでいただけで、実際には私と同じように 少しずつ体がついていけなくなったんだと思う」 体をふら付かせながらこちらに向き直ったこなたは、自分の胸の前で右手の拳を握り締める。 先ほど大丈夫などと言っていたが、それが強がりなのは確認するまでもない様子だった。 「私は背が低いから、背の高い相手への顔や頭部を狙っての攻撃は当てにくいし、 かといって女の私じゃ力も無いから、一撃で相手を倒すだけの破壊力も持ち合わせていない。 だから、持久戦に持ち込むことにしたってわけ。速さなら負けない自信があったからね。 とにかく相手からの致命傷になる攻撃だけは避けて、ひたすらに相手の動きが鈍くなるのを待つ。 私が勝つには、それしかなかったから」 息を切らしながらも、笑みを浮かべてそう答えたこなたの言葉に、私は改めて息を呑んだ。 自分と相手の力量を正確に分析し、敵わないと見れば長期戦で隙を窺い続けるという 冷静な判断力を持ったこの少女は、本当に私のよく知っている泉こなたと同一人物なのだろうか? つかさが気を失った時、頭に血が上った私は怒りに身を任せて闇雲に攻撃し、 敵わないと悟った私は恐怖で体を縛りつけられた。 だがこなたは違う。多人数が相手でも恐怖で臆することのない勇敢さ、 自分の力と判断を信じ、決して諦めを見せないその精神力とそれを可能にする 身体能力の高さに、私は感嘆の思いで、目の前にいる私よりも小さな少女を 見つめることしかできなかった。 「でも、流石に疲れたよ。つ――」 こなたが言葉を続けようとした時、こなたの背後に大きな影が迫っていることに 気づいた私は、再び湧き上がってくる恐怖を押し殺して、腹の奥から声を上げた。 「こなた! 後ろ!!」 たった今、こなたが倒したはずの男がこなたの後ろで拳を振り上げ構えていた。 私の様子に状況を瞬間的に察知したこなたは、私の胸を突き飛ばし、 私は尻もちをついてしまう。こなたは素早く身を返す。が、一歩遅くこなたに 男の右腕の拳が振り下ろされる。こなたは左腕で相手の拳を防御しよう構えるが、 即座に回避行動に切り替えた。 間に合わない。そう思った私だったが何故か男の拳が振り下ろされても こなたは吹っ飛ばされない。外れたのか? そう思った瞬間、男の右手に 白い独特の金属光沢が見えた私は、これまでとは比較にならないほどの悪寒を全身で感じていた。 刃渡り約15 cm、男はついにナイフを取り出しこなたに襲いかかったのだ。 男はこなたに追撃をかけるためにナイフを切り返す。こなたはなんとか二撃目を交わし、 攻撃一辺倒の体制だった相手の顔面にハイキックを叩き込んで、相手をよろけさせた後 こなたは身を屈めて男に体当たりをしかけた。こなたの体当たりをまともに受けた男は その場から吹き飛ばされ、こなたも後ろに跳躍して距離を置いた。 「こなた!腕から血が!」 男に切り裂かれたこなたの左腕からは闇夜でも分かるほどに血液が溢れだしていた。 鮮血はこなたの腕を伝い、水滴となって地面に落ちていく。 「大丈夫、深手じゃない。多分、皮膚を切られただけだと思う」 「腕を切られてどうして大丈夫なんて台詞が出てくるのよ!」 一歩間違えれば殺されていたかもしれないというのに、どうして切られた 当人であるはずのこなたはこうも冷静でいられるのか。 こなたに吹っ飛ばされた男はもたもたとした動作で立ち上がった。向こうもこなたの 攻撃の影響か動きが鈍い。しかし未だ手に持った凶器のおかげで攻撃力は格段に上がっている。 「貴様なんかに、貴様のような餓鬼にこの俺が負けるはずが無い! 負けるはずが無いんだぁぁぁ!!!」 男は天に向かって吠える様な声で叫んだ。 気が狂っている。もはやそうとしか表現し様が無かった。こなたに負けたことを 認めたくないのか、血走った眼でこなたのことを睨みつけており、私とつかさのことなど 既に眼中に無いようだった。 この男はもはや人間ですらない。殺意を持って、己の欲望のままにこなたに刃を 向けるその姿は、ただ人の形をとっているだけのモンスターにしか見えなかった。 こんな奴に関わったらこなたは本当に殺される。最悪のイメージを思い描いてしまった 私はこなたに逃げるように悲鳴に近い叫び声を上げた。 「こなた、逃げて! あいつ気が狂ってる!」 「まぁ、婦女暴行を行なう奴の気が正常とは思えないよね」 「そういう意味じゃない! こなたにだって分かるでしょう!? さっきまでとは 明らかに様子が違う!」 「うん、そうだね」 危機感がまるで無いのか、私に背中を向けているこなたは静かにその状況を見ているだけだった。 そんなこなたの態度が余計に私の声を荒げさせる。 「分かってるなら早く逃げて! どう見たってあいつの狙いはこなたの命よ! いくらこなたが強くても、ナイフなんかで刺されたらどうなるか分からないのよ!?」 「そうだろうね」 「だったら早く逃げなさい!! こなたの脚力があれば逃げることぐらい――」 「かがみ。焦る気持ちは分かるけど今は落ち着いて。こういう時こそ冷静にならなきゃいけない」 こなたは私の声を遮り、深海のような静けさを湛えた声で私を諭すように話しかける。 「私が逃げたところで、かがみたちが安全だなんて保証はどこにも無いんだよ。 百歩譲って今のボロボロのあいつからなら、かがみだけなら逃げられるかも知れない。 でも気を失っているつかさはどうなるのさ?」 こなたの言葉に興奮した私の体が急速に冷えていくのを感じる。私は後ろで気を失っている つかさに目を向けた。今は指一本動かすことのできないつかさの姿に、失いかけた理性を 徐々に取り戻させていく。 「さっきも言ったでしょ? 私たちがこの状況を打破するには、こいつを倒すしかないんだよ」 こなたの言葉は正論だった。こなたが逃げ切ったところで、錯乱状態にある男が 私たちに刃を向けない保証はどこにも無い。そうなった時、私も危険ではあるが それ以上に動けないつかさが一番危険なのは言うまでもない。つかさを抱きながら 逃げることは私にもこなたにも不可能だろう。結局、こなたがこの男を倒すのが、 みなが無事に帰る唯一の道なのだと改めて思い知らされた。しかしその道を選ぶということは、 こなたの命に関わることになる。理性ではそれしかないのだと理解できても、 私の感情が収まりそうもなかった。 「そうだけど、でも……でもこなたは……!!」 「大丈夫だよ、かがみ。私は絶対に負けない。私を信じて」 「信じたいよ。信じたいけど……!」 こなたは、死んじゃうかも知れないんだよ? 出かかってきた言葉を私は呑み込んだ。 そんなことは冗談でも口にしたくなかった。それを言ってしまったら、本当にこなたが 死んでしまうかもしれないと思ってしまったから。もう二度と、こなたと笑い合うことは できないと思ってしまったから。絶望的と呼べる喪失感に恐怖し、先ほど収まってくれた 涙が再び溢れ出してくる。あまりにも無慈悲な現実に私は自分の指が軋むほどに強く 拳を握りしめて俯くことしかできなかったが、こなたは私に前で膝を折り、 私の左肩にそっと手を重ねた。私は嗚咽を堪えてこなたの顔を見上げた。 「だって、もしここで私が負けたら、誰がかがみとつかさを護るっていうのさ?」 こなたは笑っていた。涙でくしゃくしゃになった私の顔とは対照的に、 こなたの顔は怪我で傷つきながらも、一点の曇りもない笑顔で私を見つめていた。 私の中で暴れていた感情が鎮まり始める。 この笑顔、この瞳に、私は何時も救われてきた。つかさが病気で学校を休んだ時、 勘違いの恋に勝手に浮かれて、誤解と分かり一人で落ち込んでいた時。 普段はおちゃらけているくせに妙なところで人一倍感がいい。私が辛い時、 こなたはいつも私に微笑んでくれた。 そうだ。今はもう、つかさだけじゃ無い。私を助けてくれるのは、 私を支えてくれるのは、つかさだけじゃないんだ……。 「かがみも、つかさも、私の大切な友達だから。絶対に護ってみせる」 こなたは私にそう宣言し、立ちあがって私に背を向けると戦場へと足を向けた。 もう、私の中に恐怖心は無かった。 もし万が一、この戦いでこなたの腕が使えなくなってしまったなら、私がこなたの 腕として、これから先を支えてあげよう。足が使えなくなったら足に、 目が見えなくなったら目になってあげよう。 そして、もし万が一……。万が一にも、こなたがここで死んでしまうようなことに なったら、これから先どれほど月日が流れようとも、どんな手段を用いてでも、 私がこの男を裁く。今は無理でも、たとえ法が許したとしても、いつか絶対に この男を私の手で裁いてみせる。そして、生涯をこなたの心と共に生きよう。 できることなら無事であってほしい。しかし、万が一のことがあったらその時は 私も覚悟を決めよう。 私はこなたの背中を見送りながら、自分の心にそう誓った。 こなたはナイフを突き出した男に身構える。男もこなたにジリジリと近づいていく。 お互いの距離はおよそ1.5 m。その位置でどちらもお互いの隙を窺いながら動かなかった。 一陣の風が吹き、こなたの青い髪が大きく風に靡く。 刹那、男がこなたの顔面目掛けてナイフを水平に振り回す。 こなたはナイフの描く軌道を後退してかわした。ナイフで切られた こなたの青い髪の何本かが、輝く糸になって宙を舞う。 一撃目を見切られた男は、今度は後方には逃すまいとリーチを生かして 顔面目掛けてナイフを突き出す。 こなたは横に交わすと、切られた左腕で男がナイフを持った右手を上から抑えるのと同時に、 右手でナイフを持つ指目掛けてアッパーを当てる。 男が手にしたナイフはこなたの攻撃で、空高く打ち上げられる。 空に舞い上がったナイフを見上げた男はこなたから注意を外したことで、 こなたの掌底を顎に受け、上体を反らした男の腹部に体重をかけた肘打ちが打ち込まれる。 幾度となく攻撃された腹部へのダメージが蓄積し、男は動きが止まった。 こなたは腰を深く落とし、右腕の拳を後ろに下げて構えをとった。 それは今までの速さを重視してきた攻撃とは明らかに違う、 相手を倒すために力を一点に集めた渾身の一撃だった。 「はぁぁぁぁぁ!!!」 雄叫びを上げながら放たれた、こなたのジャンプ右アッパーを叩き込まれた男は、 絶叫一つ上げられないまま、大きな弧を描きながら背中から地面に落ちる。 男は白目を剥いた状態で気を失い、空を舞っていたナイフが金属音を鳴らしながら 男の近くに落ちた。 今度こそ、終わったんだ。張り詰めた緊張の糸から解かれ、強張っていた私の体が弛緩していく。 戦いの終結を告げるかのように辺りを静寂が包む。夜のしじまの中、 月明かりで照らされた青白い髪を靡かせるこなたが私に振り返ると、いつもの様に微笑んでいた。 想いを言葉に(3)へ続く コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-05-30 08 06 34)
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ふと眼が合った時に心臓が強く、とても強く鼓動を一つ打つ。 手が触れ合った時に、胸が締め付けられ息が出来なくなる。 いつからだろう。 いつからなのか。 こんなにも こなたを好きになってしまったのは。 『ジャスト・コミュニケーション』 休憩時間の教室の笑い声の響きに耳を傾けながら、かがみは目の前でよく動くこなたの幼い唇を眩しい気持ちで見ていた。表情を余り変えないこなたは、でも活き活きとした口調で、自分の好きな趣味、好きな話題を喋っている。 いつもの平和な光景。 でもかがみは、そんなこなたのありふれた姿を見るだけで、どうしようもなく胸を締め付けられる。 いつの間にかかがみは蜘蛛の巣にかかった獲物みたいに、こなたに心を捉えられ、そこから抜け出す事が出来ないでいる、馬鹿みたいと思っても、気づけば視線はこなたを追いかけていた。 「どしたの?かがみ?」 と心配そうに尋ねるこなたはまるで童女みたいに無邪気で、かがみは笑顔を返すのが辛かった。 自分の想いは不純で、おかしくて、道を外れてしまっているから…… 「なんでもないよ」 とかがみは笑う。 そして、どうしようもなくこなたへの恋に落ちていくのだ。 最初のきっかけは何だったのか。 そもそもきっかけなどあったのか。 いつの間にか、いつの間にか、かがみはこなたを愛してしまっていた。 いつも見せる笑顔に、意外と気遣いなところに、母親を無くしても負けない強さに、でもその裏にある弱さに、気づけばかがみは惹かれて、どうしようもないほどこなたに恋をしている。 「今日、一緒に帰ろ」 というこなたは無邪気な親友への信頼の笑顔で、かがみは幸福感と罪悪感の板ばさみに苦しんで、辛いのか嬉しいのか分からなくなってしまう。 「うん」 と頷くかがみは、恋する少女の顔をしていた。 ……… 2人で歩く通学路は、初夏の匂いがした。 道の端の雑草が青々と茂り始めて、草木や花の生命力が活気付いていく季節だ。風に混じる草と雨の匂い、かがみ達の服は夏服に変わったばかりで、こなたの幼いほど細い二の腕が元気に揺れていた。 「最近、かがみ、元気ないんじゃない?」 「そんなこと……ないよ」 とかがみはこなたから目を逸らしながら言う。 「何かあったら言ってね。私はいつでもかがみんの味方だよー」 冗談めかして言うこなたの声音はでも、本気で心配している声だった。 心配、かけちゃってる。 どうしたらいいのかな? どうしたらいいんだろう。 「ねえ、こなた……」 「何?」 かがみは急に声音を変えて言う。 「あ、あのさ、なんか、前にあんた、百合ものとか読んでたじゃない?」 「んー?」 こなたはその質問に不思議そうに首をかしげている。 「あんた、ああいうのに興味ある訳?その、なんていうか、百合みたいなのに」 「あはは、かがみ、百合ものを読むのと現実に百合かどうかは違うよー」 とこなたは当たり前の説明に続けて、こう言った。 「私、ノンケだしね」 当たり前のこと。 そんな当たり前の発言にかがみは強く衝撃を受けて息が出来なくなる。 何を期待していたのか。こなたにそんな趣味がないなんて、当たり前のことじゃない…… でも私はその言葉に眩暈がして。 自分を全否定された気がして。 それでもこなたをどうしようもなく愛していて。 言いたいけど言えなくて……。 だから、笑った。 「そりゃそうよね」 って、できる限り元気よく。 この想いはいけないもの。 こなたは、好きになってはいけない人。 だから、この想いを私はそっと心の中の深い深い池に沈めた、もう二度と上がってこれないように……。 「変なかがみ」 「何がよ!別に変じゃないじゃない」 そんな風に、友達として笑いあえる。 この先もずっと。 そう思っていた。 ……… 耐える月日は長く、悩ましい夜も長い。 ふと見せるこなたの表情やしぐさを見る度に、沈めた筈の気持ちはすぐにでも浮き上がろうとしてかがみを苦しめた。 そしてある日、どうしようもない気持ちが盛り上がって、抱きついてきたこなたを抱きしめ返そうとする自分に気づき、かがみはこなたのクラスに行かなくなったのだった。 もう数日、こなたのクラスには行っていない。 「最近ひーらぎ元気ねーなー」 日下部が不思議そうに私を見つめる。 「べ、別にそんな事ないわよ」 「まあ、最近はちゃんと私たちと昼ごはん食べるようになったし?ちびっこの所に行かなくなったから、あたしはうれしいぜー」 ちびっこ、と言われただけで、かがみの胸は潰れそうなくらい苦しくなる。 「どったの、ひーらぎ?」 「何でもないわよ」 そう言うかがみは無理をしていて、峰岸の心配そうな表情が印象に残った。 休憩時間にお手洗いに立つと、こなたとすれ違う、一瞬こちらに向けられた何か言いたげな視線が私を苦しめ、私は出来るだけ目を合わさないようにして歩き去る。 「かがみ?」 不意に私に発せられたこなたの声に驚いて私は気づく。 自分の頬が濡れている事に。 私は恥も外聞もなく駆け出した。 こなたに捕まらないために。 泣きながら、廊下を。 ああ、私はどうしてもこなたが好きなんだ。 だから こなたの傍にはいられない 傍にいたら、気持ちが溢れてしまうから。 私は こなたを愛さずにはいられないのだ。 泣きながら駆け込んだお手洗いの個室で、私は授業時間になっても戻らず、すすり泣いていた。 ……… 放課後、当然かがみはこなたに詰問された。 こなたはかがみが逃げないように授業が終わると真っ先に教室に駆けつけて、こう聞いたのだ。 「かがみ、何で泣いてたの?」 あなたの事が好きで仕方がなかったから、なんて、言えない。 「……何でもない」 「でも!」 「こなたには……関係ないよ」 これ以上聞くなと暗にしめすと、こなたは口ごもった。 気まずい沈黙が二人の間に流れて、時間だけが過ぎていく。 諦めてこなたは話題を変えた。 「あのさ、かがみ、最近、私のこと避けてる?」 そう言ったこなたは縋るような目でかがみを見ていて、それだけでかがみは動揺し、どうしていいか分からなくなってしまう。 「そんなこと……ないよ」 力なく呟くかがみに、こなたは不安そうな顔をした。 「私の事がいやになったんなら、そう言ってくれていいよ?私、自分勝手なとこあるし、だから、かがみを怒らせてたのかなって……」 「そんなこと、絶対ない!」 こなたに悪いことなんて、何一つない。 悪いのは、私だから。 こなたを好きになってしまった、私が……。 「じゃあ、今まで通り、仲良くしていいんだよね……?」 そういうこなたは想像以上に儚げで、弱弱しく見えた。かがみに拒絶されるのを、この上なく恐れているみたいに。 「当たり前じゃない!こなたと私は、その……友達、なんだから」 友達、という自分の言った言葉に微かに傷つき、しかし受け入れるしかないんだ、ともかがみは思い、友達で居られる事のうれしさも混じって、かがみはどんな顔をしていいか分からなくなった。 「よかった……かがみに嫌われたんじゃなくて、本当に良かったよ」 と言って微笑むこなたのあどけない笑顔がかがみの胸を締め付ける。こうして傍にいられるだけでも、私は幸せなんだ、とかがみは自分に言い聞かせる。この後の絶望を想像もせずに。 「あのね、かがみにだけ、相談したい事があるんだ」 とこなたが声を落とした。 「なによ?」 「みゆきさんや、つかさには相談しにくくてさ」 そう言って、こなたは懐から一通の手紙を取り出す。 「かがみと仲直りできて本当に良かったよー」 「その手紙、なに?」 尋ねるかがみの声は震えていた。 「ラブレター、下駄箱に入ってたんだ」 目の前が真っ暗になった。 こなたが受け取った、男子からのラブレター。 こなたが何か言っているけど、聞き取る事が出来ない。 心臓の鼓動だけがうるさい。 何も見えない、何も聞こえない。 「かがみ?」 「ん、うん、聞いてるわよ」 深呼吸すると、まるで空気に黒いものが混じっていたみたいに、嫌な気持ちでいっぱいになる。ラブレターを貰ったこなたを、ぜんぜん祝福できない。 友達なのに、こなたがそういう風に幸せになるのを望んでない悪い自分に気づく。 今の私は、嫉妬の塊だった。 封じこめた筈の想いが、浮かび上がってくる。 私は、性別が違うからという理由で簡単にラブレターを渡す事が出来るその子を憎んだ。全く身勝手に。 「どうしようこれ、かがみ」 そう言うこなたが無邪気で。 うれしそうに見えて。 きっとその男と付き合うに決まってると思えて。 私は、訳が分からなくなってしまった。 「好きにすればいいじゃない!!」 気づけば、大声を出していた。 胸の中が、黒いもので塗りつぶされていく。 「何で私に聞くのよ!私に聞かないでよ!誰とでも、何とでも!好きなように、付き、付き合えばいいじゃない!!私に関係ない!!関係ないよ!!」 目からは涙が止まらずあふれ、視界はたちまち滲み、こなたの姿がぼやけた。 いたたまれなくなって教室を飛び出した私は、曇り空なのを分かっているのに、傘も持たずに学校を飛び出した。 案の定、駅前に着くより早く雨が降り出し、私はあっという間にずぶ濡れになる。それでも走るのをやめず、私はただただ破れかぶれな気持ちで走る。 叫びだしたかった。 でも何を叫んでいいかすら、私には分からないのだ。 途中で転んで私は膝を擦りむき、惨めなくらい濡れ鼠になって、それでも立ち上がると走った。できるだけ遠く、どこまでも遠くへ行くために。 何もかもを忘れるために。 ……… 放課後の雨の街をかがみは彷徨い、周囲の人にぎょっとされるほどボロボロの姿だ。それでも、寒ささえ感じない。 「今ごろ、こなた、告白を受けてるのかな」 そう思うと、胸がつぶれてしまいそうで……。 辛いよ、苦しいよ……こなた……。 気づけば、こなたの事ばかり考えている。 こなたの事を思えば傷ついてそれを振り払おうとし、そして気づけばまたこなたの事を考えて傷つく。 かがみの胸は未だに新しく傷つき続け、いつまでも血を流し続けるのをやめない。こなたへの想いのために。 「こなた……」 今なら、ずぶ濡れなことも嬉しく思えた。涙を隠せるから。 「こなた、こなた、こなた……!」 どうしていいか分からないめちゃくちゃな気持ちが、私の中で暴れてる。 心がバラバラになったみたいで。 男の子の隣を歩くこなたを想像するだけで死んでしまいそうになる。 助けてよ、誰か、誰か……助けてよ! 雨の町を亡霊のように当てもなくかがみは歩く。 ただただ、心の中でこなたの名を叫びながら。 そして気づいたら、かがみはこなたの家の前にいた。 ずっとずっと、こなたの事ばかり考えてたせいだ……。 泉と書かれた表札に、まるで縛られたみたいにかがみの足は動かない。 こなた、もう帰ったのかな。 それとも、ラブレターの相手と一緒に……。 涙が止まらない。 視界が涙と汗と雨でめちゃくちゃになる。 そして、ガチャリ、と音をたててこなたの家の扉が開いた。 「かがみ!!」 殆ど悲鳴のような声をあげてこなたが現れた。 信じられない。 余りにもこなたの事ばかり思っていたせいで見える幻影だと思えた。 こなたは真っ直ぐかがみに駆け寄ってくる。 かがみはそれを現実とは思えなくて、冷え切った体は動かなくて、疲れた足は逃げ出そうと思っても一歩も動かなかった。 「なんで!?こんなずぶ濡れになって!」 こなたがかがみの手を掴んで、家の方に引っ張っていく。かがみは幼女のように素直にそれに従った。こなたの手が暖かくて、かがみはそれでまた泣いた。 「いま、ゆーちゃんもお父さんも出かけてるから」 と言ってこなたはかがみをお風呂場へ連れて行った。 「たまたま、お湯を張ってる所だったんだ。すぐ脱いで、洗って乾かすから。風邪引いちゃうよかがみ」 服を脱がそうとするこなたを断って、かがみは自分で服を脱ぐ、と夢見心地のまま言った。 こなたはあきらめ、脱衣所から出て行く。 制服を脱いだ体はずぶ濡れになって冷え切っていた。悲しいくらいに鳥肌が立っていて、その腕は痩せていた。かがみは湯気に曇る風呂場へ入っていき、湯船につかる、そうすると湯の熱さに体がとろけていくような気持ちがした。 「何やってるんだろう……私」 友達を祝福できなくて。 嫉妬して。 馬鹿みたいに駄々こねて。 こなたを怒鳴りつけて。 「最低だ……私」 お湯に潜る。 湯船の熱さがつま先から頭のてっぺんまで隅々に行き渡る。 まだ生きている、とそれでかがみは実感した。 そして湯船から顔を出すと、風呂場の向こうの曇りガラスに、ぼんやりとこなたの姿が写った。 こなたは脱いだ衣服をまとめたりしているようだ。 かがみはどうしてもこなたに謝りたくて、言った。 曇りガラスの向こうへ。 「あのさ・・・今日はごめん、いきなり、怒ったりして、私、変だったよね」 お風呂場に反響する自分の声が、想像以上に落ちこんだ小さい声であることにかがみは苦笑する。 「別に気にしてないよ」 と言いながらこなたは、曇ったドアの向こうに、少女の滑らかな体の輪郭だけがにじんでいるのを見た。こなたはその細い、折れそうなほど細い少女の輪郭に声をかける。 「着替え、ここにおいておくね。私のだからサイズ全然だけど」 そう言って脱衣所から出て行こうとするこなたに、思わずかがみは声をかけていた。 「待って、こなた」 言いたいこと。言えないこと。 かがみはできるだけの勇気を振り絞って言った。 「あのね、私、今日……ずっとこなたの事ばっかり考えてた……傘も忘れて、街中歩き回って、馬鹿みたいでしょ?それでも、こなたのこと考えるのやめられなかった。こなたがラブレター貰って、それで、告白を受けてるんだと思うと……私……あのさ、こなた」 「告白、OKした?」 かがみのガラス越しでも分かる震えた声……殆ど涙交じりのように切実な彼女の声に、こなたは深く静かな覚悟を込めて言った。 「あのね、かがみ、その事で話したいから、お風呂あがったら私の部屋に来てよ」 「え?」 かがみはこなたのいう「話したいこと」の中身が分からず、いてもたってもいられない気持ちになった。彼と付き合うことになった、という報告の可能性が、重くかがみの心にのしかかって、その心をバラバラにしてしまいそうになる。 友達なんだから、祝福してあげなきゃ、と泣きそうになりながら思って。 それでも納得できない心が悲鳴をあげている。 いつまでもぬるま湯に浸かっていることは出来ないんだ、多分。 だからかがみはお風呂からあがって、その小さな服に袖を通した、全然大きさのあっていない服は、こっけいなくらい丈が短かった。、 「これ……こなたのかな」 こなたの匂いがする……。 かがみはこなたの匂いにつつまれながら、階段を上がり、その服の持ち主の部屋をノックした。 「開いてるよ」 覚悟を決めて中に入ると、こなたは椅子の上にあぐらをかいてまっすぐにこっちを見ていた。痛いほど真剣な視線で。 「あのね、かがみ……」 不意の恐怖に襲われて、かがみは自分の耳を塞いだ。 もし、男の子と付き合うことになった、なんて聞かされたら、自分は耐えられない。 どうしても耐えられないのだ。 「嫌よ、いや……聞きたくない!」 「聞いてよ」 「嫌!」 かがみは、自分が泣きじゃくっていることに気づいた。なんてみっともなくて、格好悪くて、最低な姿、こなたにだけは見られたくなかったのに、私が沈めた筈の心は、ついに私をのっとって、私自身になってしまった。 「聞いてよ!!」 こなたが無理やり、耳にあてた私の腕をふりほどく、唇が触れそうなくらい、こなたの顔が近くにあった。私はまるで子供みたいにもがいて、首をふってあがく。 「嫌!」 「かがみ!!」 そしたら。 いきなり こなたが、私にキスをした 腕から、力が抜けていく。 気づいたら、私はへたりこんでいた。 「私、ラブレターの告白断ったよ」 「なんで……?」 「そんなの言わなくても、空気で分かるじゃん」 顔を赤くしたこなたが、テレながら言う。でも許さない。私はさんざん苦しんだんだからね。 「お願い・・・こなたの口から聞きたい」 こなたはまっすぐに私を見て、はっきりと告げた。 「私が、かがみの事が好きだからだよ」 私は不意に、今までずっと重くのしかかっていた心の錘が取れたことに気づいて、お返しのようにこなたにはっきり告げた。 「私も、こなたの事が好き!大好き!!」 思わず抱きついた私の目を、こなたがじっと見つめて、私は吸い込まれそうになる。そしてこなたはそのまま、私に口付けて、そして…… もう私は何も恐れないで、こなたと感じあえる確かな今を掴んだ。 決して誰にも奪えない私たちの時間。 雨に打たれても全く色あせなかった熱い想いを、確かに私はこなたに体中で伝えた。 ……… 「かがみって乙女だったんだねえ」 と言ってこなたが笑っている。 昼休みの屋上の青空が私たちを見下ろしている。昨日の雨なんてまるで無かったみたいに。 「うるさいわね。そりゃ私だって、悩むわよ!悪い!?」 「んーん、悪くない」 フェンスにもたれかかっていたこなたが、私の胸の中に飛び込んでくる。 「いま、凄く凄くうれしいよ」 そう言ってこなたが笑っている。 激しい雨でも、いつまでも振り続ける事はない。 今日は快晴。 私は太陽に向かって伸びをした。 これから先、雨に打たれるような事もあるだろう。 きっと辛い事だってある。 でも。 私はこなたを抱きしめ返す。 「わ、かがみ、ちょっと」 この想いがあるかぎり、きっと歩いていける。 私はこなたに口づけると、悪戯っぽく笑ってみせた。 今まで苦しんだ分、散々振り回してあげるから、覚悟してよね、こなた! コメントフォーム 名前 コメント GJ!!(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-22 10 27 00) 最後の締めくくりがいいですね…素晴らしい!! -- 名無し (2010-06-02 00 09 42) 題名はWのオープニングですか? とにかくGJです! -- 名無しさん (2010-05-24 07 58 48) 泣けた・・いい話だなぁ! -- 鏡ちゃん (2009-09-29 19 43 44) 石破ラブラブ天驚拳放てそうなくらいアツアツな二人だね -- 名無しさん (2009-09-28 16 54 32) (´;ω;`)ブワッ -- 名無しさん (2009-05-05 23 58 46) 新しいこなかが神の降臨ですな。かがみんの切ない心理描写が凄く良かったです。 -- こなかがは正義ッ! (2009-05-05 20 09 39) ちょいと泣けた… -- 名無しさん (2009-05-05 04 18 32) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)